カーデザインの本場から京都へ
石丸さんと最初に会ったのは、イタリアから帰国されGLMに入社された頃だった。イタリアでは、フィアットグループでカーデザインの本場を経験したばかりでまだ熱も冷めやらぬ時。一方、その頃のGLMは京都発のEVベンチャーとして邁進しつつも、デザインに関するキープレイヤーはおらず、石丸さんはすぐにその存在感を現すこととなった。その最たる1台は2017年に旭化成とGLMの共同開発として発表された AKXY(アクシー)。SUVのEVコンセプトカー AKXYのデザインを石丸さんが担当。旭化成のヴィジョンをカーデザインの力で見事に具現化させていたことは、今でも鮮明に覚えている。
その後、独立してデザインスタジオ、Fortmarei を2018年に設立。最初に発表となったのは AKXY の続編となる AKXY POD だった。インテリアのコンセプトモックではあったが、有機的なマテリアルを使い五感を刺激するデザインでより未来の乗り物像を表現。さらに今秋発表となった京セラの Moeye やGLMの Mobility Scooters のコンセプトカーでは、一見、クラシカルなデザインではありつつも完全自動運転を想定した新感覚のモビリティと、シニア世代に向けたまったく新しいアプローチのデザインで世界的にも話題となっている。
カーデザインを行う上でどういったプロセスで行ってるのでしょうか?
「日頃からスケッチをたくさん描くことを心がけています。そうすると、思ってもみなかったラインや表情が生まれることがあります。そういったことをスケッチで繰り返して方向性がみえてきたら、3Dのデジタル作業に移行していきます。スケッチと3Dは平行して行なっています。基本的に重きを置いているのは実際に手を動かして描くスケッチかもしれないですね。」
どういった物事からインスピレーションを得ていますか?
「幼少期から昆虫採集の好きな父と一緒によく過ごしました。父は標本を作っていたので、羽が破れない蝶々の捕まえ方や昆虫への繊細な扱い方を教えてもらいました。そんなこともあり自然からインスピレーションを得ることが多くあります。特に昆虫は、想像だにしない形が自然の中で生み出されていることに驚かされます。その斬新な配色やテクスチャーは、とてもカーデザインを行う上で参考になっています。」
これまで発表されたコンセプトカーはどれもシルバーがほとんどですが、何か意図があるのでしょうか?
「シルバーはボディーラインの陰影が最もはっきり見える色味です。僕は”形”を創るデザイナーなので、キチンと形が人に伝わる色味としてシルバーを提案することがよくあります。とはいっても、先ほどの昆虫のように突飛な色味でも美しいデザインを表現できるので、もっと新しい色味にも挑戦したいと思っています。」