Electric
GT-R

EVになったR32 GT-R

  • 2025.1.28
  • TEXT SHOGO JIMBO

現役EV開発者の持ち込み企画
遂に自動車メーカーがコンバートEVを手がける時代がやってきた。数年前に、トヨタがハチロクをコンバートしていたことは記憶に新しいが、今度は世界ではじめてEVの量産車を世に送り出した日産が、偉大なる〈スカイラインGT-R〉をEVにコンバートする日がやって来るとは・・・。世界的なJDMの人気の高まりと多くの人を魅了してやまないGT-Rは、日産の開発者たちにとっても同じこと。特にR32 GT-Rといったら絶対的な存在感を放つ金字塔的モデル。そんな名車を日産のEV開発を最前線で手がけるエンジニアが集まって行われたスペシャル企画という。
我々もBMW E21をコンバートEVにしているが、そもそもEVにコンバートすることによって、オリジナルの走りの物足りなさやメンテナンス性を根本的に改善する目的が我々にとっては大きかったが、〈R32 GT-R〉においては、素の段階で完成度がかなり高く、EVにする必要があるのかと疑問に感じてしまう。そんなこともありネガティブな声もあるようだが、実際にオートサロン2025の会場で《R32 EV》の実車とその解説を聞いてみると、我々の印象は大きく変化した。

 

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GT-Rのデジタルリマスター版
パッと見はグッドコンディションな〈R32 GT-R〉。でも中身は最新スペックのEVに変貌。オートサロン会場では、EVであることに気づかずに見ていたというユニークなエピソードも耳にしたが、今回の〈R32 EV〉は昨今のレストモッドのように、オリジナルを凌駕するスペックを追求したというわけではなく、本来の乗り味の魅力をEVとして忠実に再現できるか挑戦したという点が最大のポイントだろう。リリースの言葉を借りれば、ガソリンモデルをアナログと捉えるなら、EVモデルはデジタル。つまり〈R32 GT-R〉のデジタルリマスター版として、後世にその個性を伝えることができるのかが、本プロジェクトのコアな部分になる。名機の所以とされるRB26ツインターボエンジンは、日産のエンジニアによって降ろされ、その代わりに日産リーフのモーター2機にスワップされている。R32 GTR自慢の4WDシステムは、前後に配されたモーターによって再現され、さらにリアシートのあったスペースには〈リーフ ニスモRC02〉のバッテリーがレイアウト。パワーウェイトレシオは、オリジナルと同等にチューニングされているという。
EVになったことでわずかに重くなった車重へ対応するため、ブレーキシステムにはGT-Rの現行モデル〈R35〉のブレーキユニットを採用。純正ホイールのようにもみえるが、拡大したキャリパーサイズにあわせて18インチにインチアップした専用ホイールをさりげなく履いていたりする。インテリアにもさりげない仕掛けが施され、メーター類は、タッチパネルとしてデジタルにすることで、さらなる拡張性をもたせ新たなレストアのスタディとしても注目したい。
本プロジェクトでは、内燃機関がいずれ乗れなくなった時代を見据えて、数値だけでは表現できないガソリン車の魅力をEVで再現することの大切さを問うものだが、奇しくも同タイミングで、日産のヘリテージコレクションに招かれ、膨大な数の日産車のアーカイブを見る機会を得た。そこで目にした無数の参考車両は将来的にEVのサンプリングとなりえる可能性があることをみて、日産の歴史こそが何処にもないアドバンテージであり財産であるように思えてならなかった。この活動から新たなクルマ作りに発展してくれることを期待したい。

 

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