OFF-GRID
VAN LIFE

オフグリッドキャンパー「POD」

  • 2020.6.8
  • TEXT SHOGO JIMBO
  • PHOTOGRAPH TOMOHIRO MAZAWA

クライアントは新たなパートナー
東京でリアルなVan Lifeをおくる井口佳亮の記事を公開して、はや3年。あれから国内の様々なメディアやVan Lifeをテーマとしたイベントが行われたりと、“車中泊”とは異なる新たなシーンがようやく国内で生まれようとしている。とはいえ、なかなかそのライフスタイルに舵を切るのは容易ではないだろう。特に家族がいればことさら。
そんな中、とあるインテリアデザイナーよりキャンピングカー制作の相談があったのは昨年のこと。その内容は、市場に出回るキャンピングカーにピンとくるものがなく、いっそのこと作ってしまいたいので、一緒にできないか?というものだった。依頼主は、洗練されたレジデンスを数多く手がける<utide>の齊藤美紀さん。聞けば、若い頃にご夫婦で世界中をキャンパーで旅した経験をもつ方だった。齊藤さんからの要望は、家族5人で快適に日本国内をロードトリップができ、夜はぐっすり快眠できること。さらに行く行くはレンタカーとしても貸出したいと。我々はその内容をきいて直感的に、新たなるプロジェクトができることを確信。クライアントは新企画のパートナーとなった。

ベース車両には、メルセデスベンツのスプリンターをセレクト。初期のモデルだが、タフでトルクフルなディーゼルエンジンを搭載。高速巡航は得意な方ではないが、一般道での走りは味わい深い。美しい日本のカントリーロードを気ままにドライブしたい。

EVの電力を使ってオフグリッドへ
かねてより実現したかったキャンピングカーへのアイデアがあった。それはオフグリッド・キャンパーだ。これまで数々のEVを取材していく中で、キャンピングカーに応用できる点が多々あることに気づいた。そもそも車重の重いキャンピングカーの駆動に電力を使うには無理があるが、居住スペースの電力を大容量バッテリーで賄うことは多いにありえる話。そこで本企画では、コンバートEVで知られる<OZ MOTORS>のテクノロジーを駆使して、大容量のリチウムイオンバッテリーを車内に搭載することを計画。まずはベース車両に、ADDress Wagonと同じメルセデスベンツのコマーシャルバン、スプリンターを入手。駆動こそ、ディーゼルエンジンではあるが、車内のエアコンはもちろん、照明といった電力はEVのバッテリーを使用して完全なるオフグリッドを実現することに成功。さらに居住スペースの空間設計は、<FLANGE PLYWOOD>が施工を担当し、車内での快眠は実証済み。およそ1年がかりで、我々がイメージするミニマム仕様のオフグリッドキャンパーがここに完成。この真っ白のキャンパーをこれから始まる新たなるアドベンチャーにちなんで『POD(ポッド)』と名付けたい。

サイドウォールに折り畳み可能なシングルベッドは大人でも使用可。その下にはダブルサイズのベッドをレイアウト。ハイルーフのスプリンターの車内は想像以上に広く窮屈さは感じさせない。さらにベッドの下には収納とキッチンモジュールの他、日産リーフのリチウムイオンバッテリーが搭載。

PODでおくる時間
DRIVETHRUのプロジェクトの中では表参道の<CARAVAN TOKYO>が現在もホテルとして稼働中だが、より機動性を増した形で具現化したのがこのPODにあたる。上の画像は、テスト走行時の一例だが、我々はポータブルのレコードプレイヤーを持ち込み、皆で休日の朝をコーヒーを飲みながら格別な時間を過ごした。これはあくまで一例だが、PODでの楽しみ方は目的地によって無限に存在するだろう。ぜひとも想像力を働かせて様々な楽しみ方を見つけてみたい。

PODのレンタルはじまる
PODのポテンシャルを引き出すべく、多くの方に楽しんでもらうにはどうすべきか思案していたところ、突如、我々の前に現れたのは<DREAM DRIVE>というキャンパーレンタルのチーム。昨年ローンチしたばかりのスタートアップの彼らは、肌感覚も近く我々とすぐに意気投合。インバウンドをターゲットとしたキャンパー作りで都内に工房も構え、フットワークの軽い彼らとなら今後のPODの更なるアップデートも期待できる。そういったわけで、PODはレンタルキャンパーとして、現在、DREAM DRIVEに入庫中。次なる記事では、DREAM DRIVEチームとPODのブッキング情報をお届けしよう。お楽しみに!

Direction:SHOGO JIMBO|Design:MIKI SAITO (utide)|Building:OZ MOTORS (Sub Battery System, Electric Air Conditioner), FLANGE PLYWOOD (Interior) IS.ME (Cockpit), TAKAHASHI PRODUCE (Mechanical Support), THREETHIRTYEIGHT INC. (Car Repair)|Special Thanks:ATSUMI HAYASHI, DREAM DRIVE, NATHALIE CANTACUZINO, HIROKI HARA, SO & AZUSA JIMBO, SHUSAKU & VIOLA MAZAWA