TOKYO
FUTURE 00

ジャガー × YOSHIROTTEN

  • 2025.5.22
  • TEXT SHOGO JIMBO

新生ジャガーが東京で魅せた未来
世界中で物議を醸した《ジャガー》のデザインビジョンコンセプト TYPE 00(タイプ ゼロゼロ)が、遂に東京でお披露目された。アジア初となる一般公開では、ハイブリッドな美的感覚をもつ気鋭の現代アーティスト、YOSHIROTTEN(ヨシロットン)とのコラボレーションによるインスタレーション『TOKYO FUTURE 00』として発表された。鮮やかなプロジェクションと音、色、構造物が連動するアートスペースでの体験は、新たなジャガーのデザイン言語となる「Strikethrough」という直線的なグラフィックに東京の景色をコンセプチュアルに再構築したもの。視覚だけでなく聴覚までも刺激する演出には、Chaki Zuluによる音響も加わり、新世代ジャガーの世界観を表現することに成功していた。
〈TYPE 00〉は、2024年末のマイアミ・アート・ウィークで世界初公開されて以来、パリ、モナコと巡回。既存の文脈から解き放たれたかのような戦略だが、それは同時に、ジャガー創業者ウィリアム・ライオンズ卿の哲学「Copy Nothing」に立ち返る試みともいえる。
今回の東京では、フォーミュラEの東京GP開催に合わせたタイミングでもあり、ブランドが今後をどう切り拓こうとしているかをアジア市場に向けて明確に打ち出す機会となった。プレスカンファレンスでは、「1960年代のジャガー・Eタイプといった輝かしいヘリテージカーはリスペクトしているが、ジャガーはヘリテージブランドではない」と強いメッセージを宣言する場面は印象的だった。YOSHIROTTENの起用といい、マイアミから始まった〈TYPE 00〉のワールドツアーに、彼の“東京”を感じさせる大胆なビジュアルアートが加わることで、新生ジャガーの先鋭的な存在感が可視化されたといえるだろう。とはいえ、日本国内での話題性はいまひとつ盛り上がっていないのは残念なところ。英国の老舗ブランドが生まれ変わろうとしているいま、その変革の時を見逃さずに受け取る先見の明が試されているかのように思えてならない。