あの頃の感覚を再び
ティーネイジャーの頃に感じた蔓延る矛盾への反抗心や溢れ出る自由への渇望は、大人に成るにつれ次第と薄れていってしまう。我々自身、日々、大人な事情に直面する故、よく理解できる。ただ、現代アートイベント「木造校舎 現代美術館 WSMA(ワズマ)」へ参加する機会を得たアーティスト 岡本 亮と神保 匠吾は学校という場所での作品発表を通じて、あの忘れかけていた感覚を思い出す作品を作り上げようと決めた。そこでレースと称したインスタレーション『TANABATA RACEWAY』を校庭で行うことを計画。アーティスト扮するライダーとモーターサイクルを絵筆に見立て、校庭を巨大なキャンバスとしたライブペインティングを構想。会場に訪れた人々をあっと驚かせようとしていた。我々がなぜここでレース形式をとろうとしたのは、真剣勝負の中でしか生まれないドラマが、ダイレクトに観る者を魅了すると考えていたからだ。しかし、インスタレーション発表の直前で、近隣住民や修験道の聖地とされる場所柄、断念せざるお得なくなった。結果的に、それぞれが制作した自身を象徴する巨大なアートワークが発表作品となるのだが、本来の計画はこれからご覧いただきたい映像作品に収められている。
世俗的な乗り物であるモーターサイクルと崇高なアートの境界線を曖昧にして、双方に混在する魅力をフラットに導き出すことが今回の作品の見所だったはずが、その垣根がかえって浮き彫りとなったことはある意味、興味深い。ここでの挑戦が、今回、参道してくれたチームと共に我々を更なる表現の地へ向かわせようとしていることを感じてならない。
Special Thanks : NARA Prefecture, OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO, TENKAWA FOREST ASSOCIATION, SHINYA ISHIDA, PEAKS MOPED’S, KAZUMA KYOCHI