DRIVE
MY CAR

電気になったマイカー

  • 2022.4.7
  • TEXT SHOGO JIMBO
  • PHOTOGRAPH YUYA SHIMAHARA

未知なる感動は気付きの連続
BMWは本当に電気自動車になった。エンジンはそっくりエレクトリックモーターに置き換わり、ガソリンタンクは、リチウムイオンバッテリーへと入れ替った。言ってみれば、ただそれだけかもしれない。実際のところ、職業柄、興味のあるクルマはほとんど運転してきたので、学生時代の思い出の1台がEVとして蘇ったとしても、その走りにはさほど期待していなかった。しかし、実際にEVへコンバートを終えたBMW E21のステアリングを切ったその瞬間、鳥肌が止まらなかった。完成してしばらく経った今もその感動はまったく色褪せていない。本来であれば、興奮冷めやまぬうちに記事にしておきたいところだったが、その感動は今も続いており、不思議なくらいだ。おそらくそれはEVに生まれ変わって見えた“気付き”にある。

普通充電のポートとなったガソリンの給油口。画像は200Vで充電中だが、一般家庭の100Vの電源からでも充電できる。

EV旋風の中で
気がつけば本企画を立ち上げて既に5年の月日が経っている。その間、電気自動車への注目度は、益々、高まっていることは嬉しいことだろう。SDGsをはじめ、欧州勢のEVシフト、中国のスタートアップ系EV、さらにトヨタがEV戦略を大々的に宣言したことは大きい。さらに昨年、E21のコンバートEVを手がけたオズモーターズがグッドデザイン賞の中でもトップ20に与えられる金賞を受賞をするなど、我々が当初に予測した以上にEVへの巨大なうねりの真っ只中にいるといえる。

新旧の架け橋になる
このプロジェクトの見どころは「コンバートEV」の実態に他ならないが、コンバートEVをみていく上で、新旧のモビリティ像を探求する“架け橋”になっていくことは間違いないだろう。古き良き時代のクルマに目をむける一方、最新モデルの乗り味や方向性を知った上でないと、ハイレベルなコンバートEVは成り立たない。現に我々のBMW E21のコンバートEVは、ナンバープレートを取得して完成したともいえるが、続々と登場するニューモデルのEVを試乗するたびに、その興奮と閃きを感じて、次世代のコンバートEVに向けて歩んでいるといえる。まさに現在進行形であり、これからE21はまだまだアップデートが必要になるだろう。

遂にコンバートEVとなったBMW初代3シリーズ「E21」。左からオズモーターズ、古川治さんとディレクター、神保匠吾

現状のE21のスペックを簡単にお伝えすると、オズモーターズの古川さんのコンバートEVのノウハウのおかげもあって、もともとのBMW E21の走行性能を考慮して、車両重量の増加を限りなく抑えたプラス50キロほどに収まっている。これはどういうことかというと、物理的にバッテリー容量を大きくすればするほど、「走る」「止まる」の動作は鈍くなる。過剰に積載したトラックが機敏な動きができないのは容易に想像できるだろう。そこで、E21のリアトランクの奥には、12kWhというミニマムサイズのバッテリーを搭載。航続距離は100kmにも満たない。ロングドライブには向かないが、急速充電器に対応してるので、その気になればドライブできなくはない。それよりも、注目してもらいたいポイントは、オリジナルの4速マニュアルトランスミッションで電動モーターを操るドライビングフィールだ。電気仕掛けのキレのある加速感とシフトチェンジの操る楽しさを兼ね備えた理想のモビリティになったといえるだろう。中でもエンジンを降ろしたことで、フロント荷重が極めて軽量になったおかげでよりダイレクトなハンドリングフィールを実現。ドライブする度にハッとさせられるのだ。

EVとなった今もBMWが謳う“駆け抜ける歓び”は健在。むしろ高まったようにさえ思える。

コンバートEVのリアルライフを配信
車検を取得してから一年半が経ち、コンバートEVとなったE21は主に我々の都内の日常の足として活躍している。EVとのリアルなモビリティライフは、まったくガソリンスタンドに立ち寄ることはなくなり、自宅や編集部での充電、そして出先の充電スポットを探したりと新鮮なことばかりだ。何より驚いたのは知らず知らずとサスティナブルな意識が芽生えてきたのが興味深い。とはいえ、まだまだコンバートEVがすべてのクルマに対して未来のソリューションになり得るかは技術的にもコスト的にもまだ現実的ではないかもしれない。そのため、目下、オズモーターズでは、VWビートルやクラシックミニのEVコンバージョンキットを開発中だが、いちはやく完成したE21を実験台に、これからの未来にふさわしいモビリティコンテンツをYouTubeでお届けしたいと思う。まずは動画配信前に、コンバートEVの仕組みを紹介する上でも、E21の完成までの様子や、日本のクラフトマンシップを駆使したレストア技術について数回に分けて紹介したいと思う。本企画を通して、コンバートEVのみならず、パーソナルモビリティについて真剣に考えるきっかけになってくれたら嬉しい。電気とは言わずとも掛け替えのないクルマで“ドライブマイカー”を楽しんでもらえるように。

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