大陸のスピード感
昨年、北京のとある立体駐車場の屋上に備わる充電器の数をみて驚かされた。その数、100基あまり。ここ最近の米中貿易摩擦といったニュースでもわかるように、中国の成長はめざましく、100%EV社会が目前に迫っていることがリアルとしてある。これはモビリティに関する話だけでなく、急速に浸透しつつあるキャッシュレス化や都市部のシェアリングエコノミーなど、日本や先進国では覇権争いのためか、なかなか浸透しない次世代プラットフォームが、今の中国には庶民の生活にアッという間に浸透するスピード感がある。そんな意味を含めて、今回ご一緒いただいたお二人に貴重なコメントをいただいたので記しておきたい。
EV100%時代 到来は近い
今回の上海で、一番の注目はNIOの「Power Swap」。かつてベタープレイスやテスラがトライし失敗しているが、ここにきて中国のニュースターNIOが新たな挑戦を開始。これからの自動車産業のトレンドを作るのは中国。このまま電池交換方式を普及させて欲しい。今後、スモールハンドレッドの時代(数百社の中小メーカーが割拠する時代)に突入した時、日本勢が果たして生き残れるかどうか。日本メーカーは、2つの致命的な間違いを犯した。1つはエコカーとしてはハイブリッドに固執しすぎたこと。2つ目はFCVという普及の見込みのない方向へ走ったこと。現段階でEVメーカーとして生き残れる可能性は低いだろう。
村沢 義久|合同会社Xパワー代表、東京大学工学修士、スタンフォード大学MBA。『図解 EV革命』著者
EV社会の完全確立を期待
中国のモーターショーは私が小さい頃にみた東京モーターショーそのもの。皆がクルマの未来を想像しメーカーも期待に応えるべく新たな挑戦を始める。中国EVベンチャーのプロダクトはデザインも優れ、既存の自動車メーカーというよりライフスタイルブランドに近く、携帯電話とスマートフォンというプロダクトに重なって見える。そんな中国にはEV社会の確立とインフラなどの課題解決について期待大。中国は人口も多く環境問題に直面している国。いち早く社会全体で取り組む体制があるので意外にアッサリと解決してしまう気もしてしまう。中国をはじめ世界ではEVや自動運転などのベンチャーが出現し、世の中を変えようとしている中、未だ日本では “ガソリン車 vs EV”という議論をしていては、かつての家電や携帯電話の世界の繰り返し。今こそ早急な変化に対応できる社会が必要です!
古川 治|OZ MOTORS 代表。日本国内屈指のコンバートEV第一人者。
かつて日本車が世界を席巻した時のように
今後、数年間で中国のEVブランドの勢いは、ますます強大になっていくだろう。中国のクルマにみられるコピーモデルは、中国市場への需要しか想定していないメーカーに限ったものだが、今の中国にはグローバルな視点と世界戦略を見据えたブランドが多く存在する。そんな彼らは決して費用対効果では測れない勢いがある。ここでいう費用対効果とは、既存の自動車メーカーの尺度では測れないもの。こういった勢いが既成概念を打ち壊し、次なるモビリティの未来が待ち受けているように思えてならない。これはクルマにのみならず、アートやファッション、音楽、さまざまな事柄にもあてはまるのではないだろうか?
さて、後編では今回のモビリティ最前線な話に対し、よりストリートな分野での中国の一例をお届けしよう。お楽しみに!