メカへの期待と憧れ
自動車の歴史は100年以上にも渡る。それはメカニズムの歴史だ。どんなクルマにも細部にまできめ細かなテクノロジーが宿っている。その最たる箇所は心臓部にあたるエンジンに他ならない。一方、心臓部がモーターに代わったEVは構造が極めてシンプルだ。構造がシンプルではあるものの、エネルギー効率を考えた時、複雑なはずのガソリンエンジンの技術革新に今日まで敵うことができずに、陽の目ををみることができないでいた。そんな自動車の歩みを辿ってよく感じるのは、エンジンに紐づくメカニズムの世界に、多くの技術者が長年魅了され続け、我こそはとブレイクスルーなアイデアに没頭し続けたのではないかと思えてしまうことだ。
エンジニアに敬意を表して
EVコンバートは、ヴィンテージマシンを現代へと蘇らせるソリューションのひとつ。ヴィンテージカーを忠実にレストアすることこそが、オーセンティックな方法ではあることに違いないが、頼り甲斐のある専門店やディーラーサポートが存在する名車であれば安心だが、すべてのカテゴリーにおいて、そういったプロがいるわけでは決してない。これから紹介するクルマは、古川さんが最新作として手がけた歴史的価値を持つバブルカー2台。バブルカーとは戦後間もなくヨーロッパを中心に庶民の足として生まれたマイクロコミューターのこと。未だ国土交通省の認可が進まない<超小型モビリティ>と同じカテゴリーが、既に1950年代のヨーロッパには存在していた。そんなバブルカーの象徴ともいえる「メッサーシュミット・KR200」と「BMW・イセッタ」をEVへとコンバートしているのは世界中をみても古川さん一人ではなかろうか?