ヴィンテージをEVにアップグレード
長らく更新できていなかった本企画だが、ディレクター神保が学生時代に乗っていた初代BMW3シリーズ(E21)は、DRIVETHRUならではのメンバーと共に進行中。さて、今回は本プロジェクトのキーパーソンにあたるOZ MOTORSより、ヴィンテージのフォルクスワーゲン・ビートルをコンバートEVしたコンプリートモデルを紹介したい。OZ MOTORS独自のパッケージングとなったEVビートルは、名付けて『e-Bug(イーバグ)』。“Bug”とは、アメリカ西海岸を中心としたビートルのニックネームだが、プログラミング言語に用いられるワードでもあるように、EVという電動化になったことで、さらに相性良く聞こえる。それにカリフォルニアが生んだカスタムビートルの代表格「Baja Bug(バハバグ)」にも通じるネーミング。
マニュアルシフトのEV
とある日の早朝、ナンバー登録を終えたばかりのe-Bugを引き連れOZ MOTORSの古川さんと江ノ島近くで落ち合った。目的は海沿いでのテストドライブ。レモンイエローのe-Bugの佇まいは、何も知らなければ70年代のノーマル・ビートルそのものではあるが、動き出した途端にキーンというかすかなモーター音が響き、そのEV独特の静けさで鳥肌が立ってしまう。本来であれば、空冷エンジンならではのエンジンサウンドを失ったことで、ナンセンスと思われる方もいるかもしれないが、ドライブしてみると電動化によりシャープで繊細なクルマへと生まれ変わった印象のほうが強い。その最大の訳はマニュアル・トランスミッションをオリジナルのまま使用していること。変速時のクラッチ操作も相まってヴィンテージカーというよりマシンを操る楽しさがよりダイレクトになっただけでなく、シフトチェンジ時のエンジンブレーキは回生ブレーキへと進化しているから驚きだ。そんなe-Bugを端的に表現するならポルシェになったビートルのよう。その訳はオリジナルのビートルでは感じ得なかった鋭い加速感やビートル特有のモノコックボディが挙動を柔軟に受け止めてくれるから。誰しも一度、ステアリングを握ってドライブしてもらえればEVとの相性の良さを感じ取ることができるだろう。
e-Bugとの日常
これまでOZ MOTORSでは、前回の記事で紹介したメッサーシュミットのように、オーナーの車両持ち込みを経てオーダーメイドでコンバートEVカスタムがメインであったが、e-Bugでは事前にストックした個体をベースにオーダーを受け付けている。しかもそのプライスは200万円台後半からなのでかなり現実的。とはいえヴィンテージVWショップ等で仕上がっているビートルに比べると割高にはなるが、購入後のガソリン代やオイル代がすべて電気代に代ることや税金さえも変わってくることを考えるとランニングコストは格段に抑えられる。
そんなe-Bugの気になる航続距離はというと、現在のところ100キロに満たない程度。ロングドライブには不向きであるが、むしろ日常使いに適しているように思えてならない。例えば、寝静まった住宅街を行き来する際、とてもじゃないがヴィンテージカーを普段使いしていては近所迷惑になりかねないが、e-Bugなら問題ナシ。また、ガソリンスタンドが激減するここ最近の都心部や地方をみても、充電に多少の時間はかかるとはいえ、家庭用コンセントの100Vでも充電できるe-Bugの方がむしろ便利。ちなみに本企画のBMWもe-Bugと同等なスペックを想定している。そんなe-Bugについては新しくなったOZ MOTORSのウェブサイトよりチェックしてみてほしい。