レストアでなく新車であること
コンバートEVを知ってからというもの、ガソリン車をEVにコンバートすることこそが、あらゆる面からしても最適なモビリティソリューションだと思い込んでいたが、そうではなかった。イギリスを拠点に、クラシックなEVを手掛ける《RBW》は、その上をいく。オールニューなMG純正ボディシェルを纏って、最先端のパワートレインで仕立てられた英国車が、正真正銘の新車としてオーダーできてしまう。ハンドメイドながら量産体制も整っており、北米進出も発表したばかり。これだけレストアやレストモッドに注目が集まり、クラシックを愛する人が大勢いることはわかっていながら、なぜ世界中のカーブランドは、スニーカーや名プロダクトのように復刻版を発売しないのか? そんな謎をRBWのEVに触れるとつくづく感じさせてくれる。
本物を裏付ける系譜
RBWは、ピーター・スウェインによって2017年に誕生したイギリス発のインディペンデントなカーブランド。もともと古き良き時代のブリティッシュスポーツカーをこよなく愛するエンスージアストの1人だったピーターさんが人生を賭けて立ち上げる。そのブランド名には、3人の子供のイニシャルが由来する。そんなRBWを真のブリティッシュとして決定づけているのは、往年のMGやトライアンフをはじめ、クラシックミニの純正パーツを手掛けた〈ブリティッシュ・モーター・ヘリテージ(以下、BMH)〉とのパートナーシップを結んでいる点が大きい。一度、BMWがローバーグループを買収した際、BMHも買収されているが、現在は独立企業として復活。1975年の創業時からのオリジナルの設計図面はもちろんのこと、ライセンスも持つという。
さらにRBWのEVとしてエンジニアリングを支えているのが、今やタイヤのみならず、EVのエレクトロニクスの分野でもシェアを拡大し続けるドイツのメガサプライヤー、コンチネンタルの〈コンチネンタル・エンジニアリング・サービス〉が初期段階からパートナーとして開発に加わり、特許を取得したリア駆動のドライブトレインがコアテクノロジーとなっている。それにしても、一体、どのようにして彼らとパートナーシップを結べたのか?と素朴な問いをピータさんに投げかけてみると、「起業した時、同じアイデアを提案する人がいなかっただけなんだ」と気さくに教えてくれた。
ジェントルなEVに秘める可能性
そもそも我々がRBWの存在を知ったのは、2023年の初夏に香港で行われたアジアローンチに招待してもらったのがはじまり。その模様は、Insta Liveにてレポートしてるので、コチラよりご覧いただきたいが、現地にてテストドライブさせてもらった RBW・ロードスター の第一印象はというと、最新のEVとはいえ、恐怖を覚えるような加速はなく、前後の重量バランスが優れた味わい深いハンドリングと、クラフトマンシップ溢れるインテリアの質感が魅力的で、今まで試したEVの中でもとりわけジェントルな印象だった。今でもよく覚えているのは、東京とは比べものにならない程、香港の街中にはテスラや中国系EVが溢れ、それこそコンパクトSUVになった中国資本のMGも見かけることができた。そんな中をRBWでドライブする感覚はとても新鮮で、未来を感じたひと時だった。それから1年。世界最高峰のコンクールイベント『ペブルビーチ・コンクール・デレガンス』にて、左ハンドルの北米モデルを発表するニュースには驚かされた。なぜかというと、モーターカルチャーが最も成熟したアメリカでのRBWのポテンシャルは計り知れないだろうし、実際のところ、往年のブリティッシュスポーツカーのほとんどは、もともとは北米マーケットでシェアを掴み成長してきた。現在のヴィンテージーカーのマーケットをみても圧倒的に左ハンドルが多いのはその証だろう。RBWのグローバル戦略が功を奏し、確実に生産を続け新たなユーザー層にリーチできればブリティッシュスポーツカーの復権がリアルになるだろう。まだ少し時間はかかるかもしれないが、東京の街をドライブできる日を楽しみに待ちたい。
この投稿をInstagramで見る
RBW Electric Cars
https://rbwevcars.com
Instagram @rbwclassicelectric