Meyers
Manx

伝説のデューンバギー 

  • 2022.7.12
  • TEXT SHOGO JIMBO
  • PHOTOGRAPH YUYA SHIMAHARA

ひとりのガレージビルダーの存在
数あるクルマの中で、これほどまで軽快に。これほどまで豪快に。そして、これほどまで観る者を愉快にさせてくれるクルマはないだろう。砂浜の上を縦横無尽に走るべくして生まれたこのバギーこそ、今、見直すべきクルマだ。フォルクスワーゲン・ビートルの空冷エンジンとシャシーを使って、軽量なグラスファイバーボディで仕立てたバギーを考えついたのは、60年代のサーフカルチャーと共に歩んだカリフォルニアの一人のガレージビルダーだった。ブルース・メイヤーズ。彼が考案した Meyers Manx(メイヤーズ マンクス)こそ、伝説のデューンバギーといえよう。

©MEYERS MANX

映画『華麗なる賭け』でスティーブ・マックイーンがドライブするシーンや、エルビス・プレスリーがデイリーユースとして使う姿は、いま観ても新鮮に映る。当時、瞬く間に世界中でブームを巻き起こすのも頷けるだろう。そんな斬新なパッケージングは、その作りやすさもあって、多くのコピーモデルの出現を招くことになる。 70年代になるとブームの陰りと共に Meyers Manx はその姿を消すことになるが、30年近くたった経った2002年に、復活。2000年代に生まれたとはいっても、キープコンセプトを貫き、新たにホイールベースを延長した4人乗りの<Manxter 2+2>が登場。今回、Type 7 の Ted が来日にあわせ、滞在中のアドベンチャーヴィークルとして用意していた Manxter 2+2 を特別にテストドライブさせてもらうことができた。

人を惹きつける力
Meyers Manx のデューンバギーと過ごした数日間は、忘れられない経験となった。渋谷を走れば、通りすがりの男性にハイタッチを求められたり、こんなにも人を惹きつけるクルマを今までを経験したことがない。よく利用する都内の商業施設の駐車場にパーキングすれば、「何てクルマですか?」「雨が降ったらどうするの?」など、素朴な疑問が飛びかかってくる。Ted が滞在する高級ホテルに返却に行った際にも、爆音を轟かせながら地下の駐車場で車庫入れしていた時、すぐ隣に停まっていたレンジローバーに乗る女性から、あまりのエンジン音の煩さに怒られるのかと思っていたら、「写真を撮ってもいいかしら?」と興味津々に話しかけられたほど。

速く走るためのクルマや、悪路を走破するためのクルマ、快適に移動するためのクルマなど、クルマには必ずコンセプトが存在するが、Meyers Manx のデューンバギーにいたっては「楽しむため」に生まれたのがコンセプトになるだろう。そうなると、どんなクルマもこのクルマには敵わない。つくづく、東京の街をドライブしながらそんなことを感じさせてくれた。このデューンバギーはまもなく南カリフォルニアにある Meyer Manxの本社のコレクションに加わるとのこと。貴重な機会をいただき Ted に感謝したい。

Meyers Manx
https://meyersmanx.com