サーキットの次は、いちばん高い場所へ
拠点とする香港から自身の〈ポルシェ・968CS〉を日本へ持ち込み、筑波サーキットでタイムアタックに挑戦したフォトグラファー、Dicky。普段はクリエイターでありながら、ステアリングを握れば、常に限界を目指すひとりのドライバーだ。そんなことを言うと、近寄りがたい人物にも聞こえるかもしれないが、彼はその逆で、たとえばレーシング走行に全力で集中した直後でも、笑顔で気さくに車から降りてくる。そんな彼が次に挑んだのは、まったく異なる挑戦だった。出発点はもちろん香港。もう1台の愛車〈ポルシェ・カイエン〉で中国本土へ入り、成都を経由してG318──中国国道318号線へと進路を取る。G318は、上海からチベット・ネパール国境の町・ザンムまでをつなぐ幹線道路。そこからさらに、目指すはエベレストのふもと、標高5,000メートルを超える高地である。そう、次なる挑戦は、オンロードな世界とは正反対の、世界屈指のピークポイントを目指すオフロードな旅。
「チベットの文化に触れながら、自分の車でその地にたどり着くこと。それが最高だった」とDickyは語る。チベットの人々、食、乾いた空気──すべてがそこでしか味わえないのがロードトリップの醍醐味。ただ、標高が3,500メートルを越えたあたりから、カイエンに異変を感じ始めたという。「エンジンの出力が明らかに落ちていくのがわかる。酸素が足りないんだ。」空気の薄さはエンジンの燃焼効率に直結し、パワーは著しく低下。さらに事態は悪化し、冷却系統にもトラブルが発生。「樹脂パーツが高地の気圧に耐えきれず、冷却水が漏れはじめたんだ。」さらに旅の途中、彼らを悩ませたのは現地のトイレ事情だった。「本当に、あっても入れないレベル(笑)」その実態は、Dickyのこの投稿をご参考までに。それでも諦めることなく走り続けたDickyは、ついに標高5,400メートル地点に到達。空の色が変わり、音が消えるような静けさの中、彼は新たな挑戦を成し遂げた。ちなみに、彼のカイエンにはDRIVETHRUのロゴが両サイドに施されている。つまり、我々のロゴを配した車が、地球上で最も高い場所に達した瞬間でもあったのだ。ありがとう、Dicky! そしてヒマラヤ到達、おめでとう!
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