エンジン周りのメカニカルな作業や外装のボディ補修が続く中、今回は本プロジェクトのもう一つの目玉、インテリアの大幅カスタマイズを紹介したい。極端な話、古いクルマは外装に多少の傷や汚れがあったとしても、エンジン機関が調子よく、車内空間が清潔でいて、そして、研ぎ澄まされた空間であれば理想的といえる。
70年代のトレンド図鑑
イスズスポーツがこれまで扱われてきたストック車両の画像資料を基に、当時のオリジナル・インテリアのバリエーションをアーカイブしてみてみると、やはり1970年代の他のクルマと比べ、117クーペは相当に垢抜けた印象だったことがわかる。
当時の豊富なバリエーションをリサーチして、その豊富さに感心されつつも、どうも本プロジェクトには、しっくり来ない気がしてしまう。やはり、どうしてもレトロすぎるのだ。クラシックであることは、好ましい点ではあるが、そもそもモノトーンなボディーカラーをリクエストしたのには、限りなく117クーペのオーセンティックな佇まいを引き出すことを狙いとしている。そのためには、インテリアにおいても一貫する必要がある。すると、オリジナルのカラーバリエーションには、あるカラーがないことがわかった。それは、ブラックだ。となれば、いっその事、内装の生地をすべて張り替えてみてはどうだろう!?
高性能なハイテク・マテリアル
ブラックに決めたからには、選りすぐりの素材をセレクトしたい。すると、絶好の素材に巡り合うことができた。東レが開発したスエード調人工皮革『ultrasuede®(ウルトラスエード®)』がそれだ。超極細繊維による、繊細な肌ざわりはソフトでなめらかな高級スエードに匹敵。それでいて天然皮革のおよそ半分の重さを実現。最近では、ファッションシーンでも多く使用されているという。そんな素材を使わない手はない。
新車のような車内空間へ
およそ1週間ほどの期間を経て、ワインレッドだったモケット素材のオリジナルシートは、ブラックのultrasuede®に張り替え完了。耐久性に優れ、型くずれしにくく、メンテナンスしやすいといわれる同素材は、湿度や寒暖差の激しい日本の四季の中でも大いに期待できそうだ。しかも、リサイクル原料を使用したエコ素材という。前回のエンジンOHに続いて、ますますDT117クーペの仕上がりが楽しみでならなくなってきた。