沸き立つ出走前の震え
富士の裾野に訪れた冬の寒さと度重なる上級レーサー達の転倒を目の前に、ToGo.のカフェラテが縮こまっていた身体へ妙な落ち着きをもたらせてくれる。ピストン式エスプレッソマシンを操るチームメイトのバリスタ土屋くんが淹れてくれるからなのか、それとも午前中のレースで果敢な走りを魅せてくれた神保くんのせいなのか、レース出走前の何ともいえないモチベーションが湧き出してくる。それに午前中のレースで多くのマシンが周回を重ねたおかげで、路面は次第に乾き風向きは良い方へ変わってきた。ただ一体どれほどのトラクションを路面が受け止めてくれるかは、まだ走ってみたいとわからない。
ミニマムな世界に向けられた世界の目
会場にはBMWの本国チームが朝から取材入りしていた。大排気量かつ高速域でパフォーマンスを発揮するBMWが、遥々ドイツから小排気量のヴィンテージのバイクレースを訪ねて来るなんて、どういった風の吹き回しだろう?と疑問に思っていたが、クルーの数名と話しているうちに、BOBLに参戦するレーサーのモーターサイクルへのパッションやマシンへのクリエイティビティの高さ。さらに参戦するすべてのレーサーが身の丈にあった速度域で“バトる”レースは世界でも数少ないという。事実、我々は完全なるアマチュアチームであるにも関わらず、知らず知らずにその神髄を肌で感じていることは言うまでもない。
ガソリン1リットル
耐久レースには特別なルールがある。ルマン式スタート※1ではじまるスタート方式に加え、ガソリンは1リットルずつしか給油してはならない。そのためスタート前はガソリンタンクを完全に空にした状態にして、オフィシャルが用意した計量カップで1リットルを給油する。(我々のマシンはほんの少しガソリンが残っていたのでガソリンホースからガソリンを抜くように指摘される)。スタート後も耐久レース中の給油の際は1リットルずつしか給油できない。そのため長時間のサーキット走行になるので燃費計算も勝利への重要なファクターとなる。DRIVETHRUの耐久レースへのメンバーは4人。交代の回数は自由だが、スプリントでスタートに慣れている神保くんを1番手に、2番手は岡本亮。第三走者はバリスタ土屋和之。そして第4走者はウェブデザイナー嘉義拓馬。前編でご覧いただいたように波乱に満ちた2016年最終戦。我々が転倒への恐怖を顧みず、いかに耐久レースへ臨んだのか後編の映像よりご覧いただこう。
BOBLへの道は続く
惜しくも第2戦を除いて表彰台に登ることは叶わなかったが、2016年のBOBL全戦をフル参戦できたことはシンプルに嬉しい。それに本企画のスタート当初、ここまでチームが一丸となってレースに向き合うとは想像もしていなかった。1台のマシン、それもスーパーカブから始まった『BOBLへの道』はまだまだ続く。兎にも角にも、早くあのピストンに羽のついたトロフィーを手にしなくては!
2017年BOBL Round1は4月2日(日)白糸スピードランドにて開戦!
※1.ルマン式スタート:レースのスタートする際、ホームストレート(もしくはピット)前にコースの対岸に向くように一列に並べられた出走マシンに向かい、スタートのフラッグの合図でコース対岸側から駆け寄ってマシンに跨がりスタートする方式のこと。名前の由来は「ル・マン24時間レース」。