ストリートアイコンの行方
ジル・サンダーにリック・オウエンス、A$AP ROCKYに、藤原ヒロシ。錚々たる10人のクリエイターでおくる《モンクレール》の一大キャンペーン『The City of Genius』が上海を舞台にスタート。注目は〈MERCEDES-BENZ BY NIGO〉名義のコ・クリエイターとしての参加しているNIGOとメルセデスベンツとのスペシャルなGクラス。モンクレールとGクラスのプロジェクトといえば、2023年に発表された MONDO G の記憶がまだ新しいが、「PAST Ⅱ FUTURE」と題した最新作では、そのコンセプトが示す通り、今はなきGクラスのショートボディのカブリオレをベースに、マットなオリーブグリーンとグレーのツートンカラーと折りたたみ式のフロントスクリーンという極めてミリタリーテイストなスタイリングでありつつも、ミニマムかつコンテンポラリーな雰囲気を醸し出すアートピースへと導いている。インテリアには、初期モデルに存在したロデオグレーという名のテキスタイルパターンをシートファブリックに使用し、インテリア全体を立体的にみせつつも、プロジェクトのハイライトとなるモンクレールのパファージャケットのエレメントを踏襲したキルティング生地が、Gクラスの幌として表現されている。さらにその幌をオープンにすれば、ゴールドにペイントされたロールゲージや携行缶が備わるだけでなく、取り外し可能なサウンドシステムとして《Ojas》のデヴォン・ターンブルが手掛けているのも看過ごせない点だろう。(デヴォン・ターンブルといえば、Gクラスのオーバーランディングとして世界中を旅する一面もよく知られている)
〈A BATHING APE®〉のファウンダーとして90年代の裏原シーンとは切っては切れない存在のNIGO。まさにそんな時代をインスピレーションにした本作だが、NIGOは今や〈HUMAN MADE〉やパリメゾンの〈KENZO〉のアーティスティックディレクターを勤め、パリコレやミュージックシーンでも常に話題の絶えない存在に上り詰めたといえる。これまでにも数々のハイエンドなカーコレクションをストリートなスタイルで楽しんできた張本人だからこそなせる技のようにも思える。今なお、東京の街を埋め尽くすゲレンデの方向性に変化があるか期待したい。
JOURNAL