DISCOVERY

セル画と旅するヨコサカタツヤ作品

  • 2023.8.2
  • TEXT SHOGO JIMBO
  • PHOTOGRAPH TOMOHIRO MAZAWA

20XX年代へタイムスリップ
茶室のにじり口のような扉を抜け、ギャラリーの中へ入ると、騒然と並ぶ田宮模型のボックスアートを模した作品とタイムマシーンと化したポルシェが1台。正面には、ジブリ映画に出てきそうな青空が描かれた風景画がひろがる・・・。どうやらここは20XX年代の人類が絶滅した後の世界という設定らしい。作家、ヨコサカタツヤさんは、20年近く、正統派な絵描きとしてキャリアを築きながらも、コロナ禍以降、アニメのセル画に見出され、近年、新たなタッチの作品を、積極的に発表し続ける注目のアーティスト。ヨコサカさんの作品は、一度、キャンバス上に精巧に描かれた絵画の上に、セル画を重ね合わせているのだが、実際の作品を間近でみると、随所に感じる細かなディテールをセル画が大胆に覆いかくすことで、かえって観る側に想像力を沸き立たせ、作品の中へ引き込まれてしまうのが特徴だ。

牧歌的な73カレラの作品は、一度は、緻密な描写でキャンバスに描かれ、その上にセル画のキャラクターを重ねて描かれている。

洗濯物とブラジャーの役目
コロナ禍に感じた人類滅亡の恐怖感に着想を得た本作では、目の前に迫り来る脅威に対し、ポルシェに乗って立ち向かうのか?それとも逃げ切るのか?はたまた潔く死に向かうのか?? プラモデルのボックスに形作られたキャンバス上に、12パターンの時代背景と冒険なるエピソードが描かれている。ヨコサカさんの作品には、本作に限らず、度々、洗濯物やブラジャーが目に付く。これは、宮崎駿作品からの影響とのことだが、例えば、洗濯物が干してあることで、絵画の中に人が映り込んでいなくとも、人の存在感が感じられる点に意味があるという。そもそも、なぜ本作ではポルシェなのだろうか?

世田谷区下馬のアートギャラリー「HEX」の前にて、作家のヨコサカタツヤさん。

ペーパードライバーレーシングチーム
ヨコサカさん自身は特にクルマ好きでもポルシェに憧れがあるというわけではなく、むしろペーパードライバーだという。では、なぜ本作では大々的にポルシェを取り上げているのかと聞くと、ピクサーの〈CARS〉に登場するヒロイン役のサリーが、廃れた街のラジエタースプリングスで異彩を放っている点に“ポルシェ”という設定だけで、キャラとして成立してることに着目したのがはじまりと話す。オタク気質を認めるヨコサカさんではあるが、宮崎駿作品をはじめ、わりと王道とされるアニメや映画、ナイキといったストリートカルチャーの要素を再解釈することで、懐かしさと一緒にヨコサカさん独自のユーモラスとして表現している。展示は9月3日(日)まで開催。次回、台湾での展示では今回と同様にポルシェを題材にした新たな作品が発表されるとのこと。願わくば取材したし。

■ヨコサカ タツヤ「DISCOVERY」
プレビュー 2023年8月4日 (金) 13:00-20:00
一般公開  2023年8月5日 (土) ~ 9月3日(日)
営業時間  12:00-20:00 (月火休 / 入場無料)
https://yokosakapro.jp/index.html

■HEX
東京都世田谷区下馬4-13-2(ヤマザキショップ横)
※駐車場2台あり(ポルシェ専用)
https://www.instagram.com/hextokyo/

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