ロマンチックとクルマの関係性
数ある都市の中でも、パリには独特な雰囲気がある。例えていうなら、東京タワーとエッフェル塔。決して東京タワーを否定しているわけではないが、グローバルな視点でみて、この違いは受け止めてもらいやすいように思える。そんなパリを舞台に活躍する一人のフォトグラファーがいる。昨年の我々のパリモーターショー取材やYorgo Tloupasのインタビューでゲストフォトグラファーとして迎えたDaniele Tedeschi(ダニエル・テデスキ)。パリ滞在中に彼のスクーターで2人乗りをし街中を軽快に移動したのは未だ記憶に新しい。彼はイタリアの自動車産業都市、トリノで生まれ育ち、パリに移住してから第一線のファッションフォトグラファーとして今に至る。
セーヌ川のほとりに構える彼のアトリエで、これまで撮りためた作品の数々をみせてもらう機会があった。デジタルフォトグラフィーも得意とする彼だが、彼の真骨頂は35mmのフィルムカメラで撮影したスナップフォト。ここ数年で撮り下ろした作品は、まるで映画のワンシーンのようなものばかり。中でも本記事のカバー画像にセレクトした川沿いに佇むシトロエンDSの1枚は、彼のアトリエの窓辺から撮影したもの。フィルムカメラ独特な質感は言うまでもないが、対岸にみえるクルマは現代のクルマが写っているので決して昔の写真ではない。それよりもシトロエンのそばで話し込む2人の男性とクルマの中で待つ男性は、どちらかの運転手なのか?はたまた2人とは全く関係がなく、誰かをクルマの中で待っているのか??それともただ時間を潰しているだけなのか???想像は無限に膨らむ。
さらにもう1枚。ベントレーのフェンダーミラーで化粧直しをする女性の写真。これから大事な人と遭いに向かうのだろうか?観る側にも緊張感が伝わってくる。そんな場面にそっとレンズを向け、クルマが名脇役とでも言うべき役割りを果たしている。
これから紹介する写真は、ダニエル特有のユーモラスを散りばめた作品の数々。モノクームに混じって時折みせるカラー写真の彩りが、リアルタイムであることを感じさせ、ドラマチックな街、パリをよりよく連想させる。決してオンライン上のストリートビューでは体験できないロマンチックなフォトジャーニーをご堪能あれ!
Daniele Tedeschi(ダニエル・テデスキ)
フォトグラファー / アートディレクター
1975年イタリア生まれ。1998年よりパリにて活動中。
Purple, Dazed & Confused, Harper’s Bazaar, ELLE 他
ファッションフォトグラファーとして活躍。
http://danieletedeschi.tumblr.com