2019 R4

美しきサンデーレース

  • 2019.12.3
  • TEXT SHOGO JIMBO
  • PHOTOGRAPH YUYA SHIMAHARA

突如訪れた参戦理由
現在、我々はBOBLの次章にむけ充電中。まだ次期チームメンバーの目処はたっていないが、そんな中、カリフォルニアから我々と一緒に参戦を望む有志がいた。サンディエゴでBMXショップを営む、キリアン・ランダーズ(Kilian Landers)だ。もともとキリアンとは数年前にCaravan Tokyoの宿泊客として知り合った仲だが、大のホンダ好きの彼はシティ・ターボ2(通称 “ブルドッグ” )をカリフォルニアでアシに使うほどのホンダフリーク。当然ながら我々の参戦記もチェックしており、今回レースに参加すべく、遥々やってくるというのだ。そんな彼のリクエストを放っておくわけにはいかず、急遽、ディレクター神保とキリアンの二人体制で、2019年最終戦に参戦することを決めた。

ゼッケンはプライスタグ
1年ぶりのレース参戦となった今回。これまでとは違ったアプローチを試みるべく、神保はクラッチ付きのモディファイドクラスにエントリーすることに。マシンはメンバーの一人、ヘスース(Jesus)のスズキ・セルペットを拝借。ただこのマシン、せっかくカスタムしたもののヘスースが現在、KURO DEKOの音楽活動に忙しく売り出し中だった。そこで、我々のゼッケン番号50とプライスタグを掛け合わせ、”FOR SALE”と掲げてレースを出走!
BOBLのクラスの中ではエントリー数が極端に少ないモディファイドクラスではあったが、優勝経験者の多いレーサー揃いのこのクラスでは、ほぼ勝ち目はないといっていい。見た目こそ小排気量で小柄なオートバイだが、常勝ライダーの華麗なライディングテクニックが拝見できるので、いつもはライディングの参考として観戦していたほど。そういったわけで予想通り神保には太刀打ちできる相手ではなくレースはプライスタグをつけた営業活動となってしまった。レース結果こそ振るわなかったが、2ストロークのならではなライトウェイトな走りが堪能できるスズキ・セルペット。今までのスーパーカブのトルク感とはまるで異なり、軽快なコーナリングやクラッチ操作でマシンを操る楽しさをサーキットで十二分に味わうことができた。

凸凹コンビ完走ならず
カリフォルニアから駆けつけたキリアンはというと、ゼッケン90番のマシンでノーマルクラスのスプリントと神保と共に耐久レースへ出場。前半のスプリントレースでは、プロレスラーの如く大柄なキリアンではあったが、前日の練習走行の甲斐もあってファンライドにて完走。途中、痛恨のシフトミス等に出遅れる場面もあったが、走り込んでいけばタイムをあげていくことは間違いないだろう。一方、耐久レースのこと。いつものようにル・マン式スタートで始まる耐久レースだが、これまでの勝ちに行く姿勢であれば、第一走者は神保が走るところだったが、せっかくカルフォリニアからやって来たこともあって、キリアンが第一走者として出走。クジ運も味方して2番手のスターティンググリッドを獲得。レースは順調にスタートしたかのようにみえたのだが、スタートを終え神保がベンチに戻りキリアンから目を離したその時、まさかの周回数3周目でキリアンがクラッシュ! 前を行くマシンの急なコースインにブレーキが間に合わず追突するかっこうとなったようだ。耐久レースでは、出走ライダーがスプリントレースに比べ倍増するため、スタートからしばらくの間は混走状態が続き、走行中のライン取りは困難を極める。急いでキリアンの救護に向かうと、左足の激痛を訴え横たわっていた。流石にレース続行は難しく、2名体制の我々は2時間耐久レースリタイアを余儀なくされてしまった。小柄な日本人、神保と大柄なアメリカ人、キリアンの凸凹コンビでおくる耐久レースをご覧いただきたかったのだが、わずか数分で幕を閉じることとなってしまった。後でわかったことだが、キリアンは左足の甲の骨を骨折してしまった。アマチュアな草レースとはいえ、時には危険が伴うのもまた正真正銘のレースと同じ。

最新のヴィンテージマシンに
レースを終え無事にキリアンは帰国したものの、昨年に続きまたも負傷者が出てしまったことに本企画の発起人としては胸が苦しくてならないでいた。そこへ今回もレースに同行してくれたフォトグラファー嶌原佑矢からフィルムカメラで撮りおさめた写真があがってきた。当たり前な話だが、出走中はレースに集中するあまり自分達以外の状況はあまり把握できていない。今回の最終戦も富士山の麓の小さなサーキットに50名以上にものぼるエントラントが全国から集まり行われた。自動運転や転ばないモーターサイクルの開発が進む昨今、各々のライダーは半世紀も前のヴィンテージ・スーパーカブをベースに、試行錯誤を繰り返し”最先端な”レーシングマシンとしてレースを楽しんでいることを改めて考えてみると、暗い気持ちなど吹き飛ばしてくれたのだった。さて、次のチーム構成をどうすべきか。もう少し構想を練るとしよう。

Special Thanks:ANIMAL BOAT, B.O.B.L, FISHTAIL GARAGE, JULIEN THIEBAUD, MELISSA McGEORGE, NOBUYOSHI MIWA, SEI KOZAKA and more