e-AXLE

コンバートEVの次なる一歩

  • 2026.7.3
  • TEXT & PHOTOGRAPHSHOGO JIMBO

“てんとう虫”のEVがヒントに
「コンバートEV」は、ただ単にガソリンエンジンを電動モーターへ置き換えればいいというわけではない。どんな車にも、その車ならではの魅力があり、それをいかに未来へ受け継ぐかが重要になる。日本国内でコンバートEVを手がける《OZ Motors》は、これまで数多くの名車やヴィンテージカーを電気自動車へと生まれ変わらせてきた。なかでもコンパクトカーのコンバート実績は多く、その一方で独創的なメカニズムを持つヴィンテージカーほど構造が複雑で、コンバートの難易度は高くなる。そうした課題を解決するために開発されたのが、モーターと駆動系をひとつのユニットにまとめた『e-AXLE(イーアクスル)』。EVのパワートレインは、バッテリーこそ重量物であるものの、モーターや駆動系は意外とコンパクトに収まる。そこでモーターやブレーキ、駆動機構をユニット化することで、車種ごとに異なる構造への対応を容易にし、コンバートそのものをシンプルにすることを目指す。記念すべき最初の搭載となったのは、“てんとう虫”の愛称で親しまれる昭和の名車《スバル・360》。本来はリアに2ストロークエンジンを搭載し、現代の車では考えられないほど軽量なボディを持つ車。その車重はわずか400kgほどしかない。しかし、リアサスペンションにスイングアクスルを採用する独特の構造ゆえ、これまでコンバートEV化の難易度は高かった。そこで新開発の「e-AXLE」を採用することで、新たな〈スバル・360〉のコンバートEV化に成功。一見すると小さな進化に思えるかもしれないが、コンバートEVの世界において、その意味は決して小さくない。

OZ Motorsが開発した「e-AXLE」。中央のデファレンシャルにモーターがダイレクトに繋がり、ブレーキも一体となっている。(photo : OZ Motors)

これまでのコンバートEVは、車種ごとに異なるレイアウトや構造へ対応するため、多くのワンオフパーツを製作し、一台ごとに作り込むことが当たり前だった。一方で「e-AXLE」の登場によって、コンバートEVはユニットを組み合わせるという新たなアプローチが見え始めている。特に軽自動車やコンパクトカーとの相性は高く、軽トラックや軽バン、さらにはスローモビリティへの展開も期待できそう。さらにe-AXLEは48Vシステムを採用しており、高電圧車両に求められる複雑な安全対策や認証上の負担を抑えやすいことも特徴のひとつ。技術面だけでなく、実際にコンバートを進めるうえでのハードルを下げる可能性も秘めている。これまで職人技の積み重ねによって成立していたコンバートEVは、いま少しずつモジュール化という新たな段階へ進みつつある。「e-AXLE」は単なる新しい部品ではなく、コンバートEVをより身近な存在へ近づけるための一歩といえるかもしれない。