アート作品には大きく2つあるように思える。壮大なスケールや精巧な出来栄えのスペクタクル巨編的作品と、言い方に語弊があるかもしれないが、本気を出せば自分でも作れそうな作品。人生の晴れ舞台ともなるような場面で果たしてどちらの作品を発表できるかというところがポイントになるだろうが、とはいえ、前者も後者もアーティスト本人からすれば作品に対する熱量は同じ。そう考えると、歴史的にみてミュージアムに所蔵される作品の多くは圧倒的に前者が多いのは疑問に思える・・・
さて、これから紹介するアーティストは紛れもなく後者にあたる。パリ在住の現代美術作家、Benedetto Bufalino(ベネデット・バファリーノ)は、パブリックスペースを舞台にごくありふれた事柄を独特のユーモアを交えてアート作品へ導いている。ここでは、数あるユニークな作品の中でもモビリティを題材にした作品に的を絞って紹介したい。
シェアサイクルを自分仕様に
シェアサイクルの先駆けとなったパリの街角では、あちこちでシェアサイクルをみかけることができる。そんな公共の自転車をバファリーノが自分仕様にカスタム!レーサーバイクに見立てたカウルやエキゾーストに至るまでダンボールで造作。YAMAHAのレタリングが何ともレーシーな雰囲気を演出。映像作品の中では、フルフェイスのヘルメットを着用して本人が登場しているので必見! [MOVIEはコチラ]
狼の皮を被った羊?
シェアサイクルを自分仕様にカスタムできるのなら、クルマだとしたらこうなる。果たしてシェアサイクルの作品のように、またしても公共のレンタカーの上にダンボールでできたフェラーリ・テスタロッサを被せているかは定かでないが、タイトルを直訳する限り許可なしとのこと。もし我々が彼の作品のオマージュをするなら本物のフェラーリにフツーのクルマのボディを被せたい。何とも危なっかしい走行シーンの動画もお見逃しなく。[MOVIEはコチラ]
ピンポン!
卓球台の脚にはきまってキャスターがついてるような気がするけれど、バファリーノが編み出した卓球台にはキャスターどころか4つの本当のタイヤがデッキ上に天に向かってくっついてる!よく考えると卓球のことをテーブルテニスとも呼ぶ気がするがこうなってしまうとどうなる?卓球中にタイヤの位置にボールが跳ね返った時が難しそうなので、動画よりご確認を。[MOVIEはコチラ]
みんなのリムジン
リムジンはVIPのために生まれた最もエクスクルーシブな乗り物。一方、バファリーノが手がけたリムジンは、庶民の憩いの場である公園に佇むみんなの乗り物。ベースになっているクルマはルノー21というフランスを代表するフツーのクルマ。誰にとっても取っ付きやすい存在だ。
朝になると・・・
夕べはただの街灯としか思っていなかったのだが、朝起きてみると公園の街灯に逆さまになったアウディが!こんな事あるわけないのだが、もしかしたらバファリーノの仕業で近所の公園の街灯が突如こうなってるかもしれないので朝起きたら要注意。
見晴らし最強キャンパー
何の変哲もないキャンピングトレーラーが、ジャックと豆の木の如く、天高く伸びていく!高所作業車をベースにしたこの作品は、高さは12mまでにも及ぶ。その高さはビル4階に匹敵。眺望の良さを考えると我々が運営するCARAVAN TOKYOの次期モデルに投入すべき発想か。
究極のレジャープール
さらに進化を遂げるバファリーノ最新キャンパーは、プールへトランスフォーム!一見、横から見たらフツーのキャンピングトレーラーだが、目的地に着いて、水をはればモバイルプールに変身。ここは無邪気に子供用のビニールで出来たプールの延長線上としてみんなで楽しみたい。
アートが毎日を愉快に
いささか個人的主観で面白おかしくキャプションを書かせていただいたが、彼の作品に我々が惹かれるのは、モビリティ(乗り物)にしか備え持たない移動できる喜びを端的にアートへと昇華している点だ。どの作品もベースになっているクルマはむしろ実働できなくなっているにも関わらず、躍動感を失うどころか新しいフォーマットとして観る側を魅了している。こういった表現方法こそが、ピュアなインスピレーションとなって未来へと繋がる気がしてならない。この他にも多くの作品があるので、ぜひ彼の作品をチェックしてみてほしい。きっと、日常がもっと愉快に思えてくるはずだ。
BENEDETTO BUFALINO
フランス、パリ在住の現代美術作家。
www.benedettobufalino.com