SHINYA KIMURA

孤高の天才バイクビルダー

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  • 2016.4.22
  • TEXT SATORU OYAMADA
  • PHOTOGRAPH AMI SIOUX

“Azusa”と聞いて、カリフォルニアの街の名を連想できる日本人が一体どれほどいるだろう? そのくらい、このネイティブ・アメリカンの旧称に由来する(日本語によく似た発音の)街の名は一般的には馴染みがないだろう。しかし一部の熱心なモーターサイクル・エンスージアストにとってこの街は、ある種の聖地であると言える。いや、正確に言えばこの街が聖地なのではなく、この街のインダストリアル・エリアの一角に居を構える「孤高の天才」の存在こそが、この地を聖地たらしめている所以なのである。

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Chabott Engineering」の主、木村信也氏の手による芸術的なマシンの数々。世界中のモーターサイクル・エンスージアストたちを虜にしたそのマシンが産み落とされたこのガレージ。いちバイク乗りとして、氏の名や氏が身一つでアメリカに渡った事はおよそ10年ほど前から耳目に触れていた。しかし、直接お伺いしてお目にかかる機会が訪れるとはよもや夢にも思っていなかった。そのきっかけは昨年5月、我々DRIVE THRUも深く関わったカスタムバイクコンテスト『The Deus Bike Build Off 2015』。このイベントを機にメールを介して氏とのコンタクトが始まり、今回ついにDeus Japanチームの面々と共にその聖地に氏を訪ねる機会に恵まれた。

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明るい外の日差しから、一歩ガレージ内に足を踏み入れると一瞬目の焦点が合わなくなる。ガレージ内にはおびただしい数の工具やパーツ、製作過程や調整過程のマシンが所狭しと並ぶが、その一つ一つに目をやる余裕が全く無いほど濃密な空気が空間を支配し、氏の世界観が塊となって脳裏に飛び込んでくる。ようやく目が慣れてくると、その空間のあちこちに氏のこだわりが見てとれ、洋の東西、時空を超えて収集された品々が絶妙な均衡を保ってその場に在ることがわかる。

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「10年前に鞄一つでやってきた。ここにあるものは全てそれから集めたものだけど、揃えたはいいけど性に合わず手放した工作機械もある」

10年とは思え無いほど、全てのものがはるか以前からそこにあるかのように感じられる。埃の蓄積も含め全てが計算されているかのように、あるべくしてそこに存在する。驚くのはここにあるマシンが決して古いものばかりではなく、高年式のMVアグスタやHarley-Davidson 、YAMAHAなど現行車両も多く手がけていること。不思議な事に氏の施す造形によって旧車は近未来的な表情へ。一方、高年式な車両は懐古的な表情にその印象を変えている。過去・未来なく“木村時間”なる旋律が流れているのでは?と思わせるのだ。

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