東京カーカルチャーの現在地
いつのまにかTokyo Car Weekと呼ばれるようになったのは、ここ最近のことでしょうか。アメリカ・カリフォルニアの「モントレー・カー・ウィーク」といった世界最高峰のカーウィークを連想させますが、その意味合いは本質的には異なる。それらがヒストリックカーや名門オークションハウスを交えたコンクール・デレガンスをコアとしているのに対して、ここ東京で起きているのは、カスタムカーを中心としたカーカルチャーにスポットが当たっている点。その火付け役となっているのが『東京オートサロン』にほかならないでしょう。カスタムカーやチューニングカーで賑わう国内最大級のイベントは、今や世界三大カスタムショーとも呼ばれる規模にまで成長。もともとはアンダーグラウンドなイベントでしたが、大手カーメーカーが軒並み出展するようになり、年を追うごとに存在感を増しています。「東京モーターショー」改め「ジャパンモビリティショー」と比較しても、車に対するオーディエンスの熱量の差が明らかに異なるのが特徴といえます。
中でも、このムーブメントの高まりを支えているのは、JDMを軸とした海外からの注目度にある。映画『ワイルドスピード』の世界観がリアルになったかのような日本独自のカスタムスタイルは、世界共通の言語となり、多くの海外ゲストがこの時期に東京を訪れるようになった。彼らが見ているのは完成度の高さというよりも、オリジナリティあふれるカスタムスタイルと、常に更新され続ける東京カーカルチャーのリアリティそのものといえるでしょう。
そんな我々も以前であれば、東京オートサロン関連のイベントに、さほど足を運ぶことはなかったけれど、近年は、見過ごせない企画や展示が多く行われるようになり、放っておけなくなったというのが正直なところ。今回は、我々がチェックしたイベントに的を絞って紹介しますが、これはあくまでシーンの断片にすぎず、これらをつなぎ合わせることで、“トウキョウ・カー・ウィーク”という現象を感じてもらえたら嬉しい。決して統一されたフォーマットがあるわけではなく、SNSを通じてリアルタイムに更新され続ける渦中に一度でも触れれば、誰も予測できない現在進行形のカーカルチャーに、多くの人が惹きつけられるということは間違いないでしょう。
▪︎TOKYO AUTO SALON
80年代にチューニングカー文化を広めるべくスタートした「東京オートサロン」は今年で44回目の開催。そのルーツともいえる雑誌『OPTION』創刊当時のムードを現代的に再構築した《SWJP》のポップアップでは、チョロQのパッケージを手がける〈さとしお〉によるグラフィックと、ショーン・ウォザースプーン本人による接客によって、異彩を放つブースが登場。さらに〈スズキ・ツイン〉をベースにした《ロケットバニー》のR32スカイラインGT-Rが国内外の注目の的となるほか、ダイハツブースでは、軽トラ〈ハイゼット〉をベースにしたメーカー公認のデコトラを披露するなど、なかなかのカオスとなった2026年の東京オートサロン。《ダンロップ》のブースでは〈いすゞ・117クーペ〉が壇上に展示され、昭和のモーターショーさながらの雰囲気に。
▪︎RoundCat 写真展「林道の思い出」
クラーク・ソッパー(写真左)率いる〈RoundCat(ラウンドキャット)〉が拠点とする、文京区・小石川のギャラリースペースで行われた写真展『林道の思い出』。昨年、我々とともに行われた《RoundCat DRIVETHRU®︎ Rally》の千葉・房総半島を舞台にしたラリーの模様を中心に、フォトグラファーのクリストファー・ルドゥクィスト(写真右)が切り取った美しい作品群がお披露目された。いわゆるモータースポーツ誌で見かける写真とは異なり、日本の田舎道の美しさと日本車の魅力を俯瞰的に捉えて表現している。会場にはヴィンテージの〈ホンダ・バモス〉が展示されたほか、〈Leen Customs〉とのコラボピンズをはじめとしたオリジナルアイテムも登場。
Built By Legends TOKYO POPUP
日本発のレストモッドプロジェクト〈Built By Legends(ビルト・バイ・レジェンズ)〉による展示は、あえて「代官山 蔦屋書店」が発表の場に。カルチャー感度の高い来場者とのコミュニケーションを図ったポップアップイベントでは、世界的ホンダチューナー〈SPOON(スプーン)〉の協力のもと、初代シビック・タイプR(EK9)をベアシャシーから再生した一台を披露。一見、オリジナル志向な佇まいを見せながらも、ボンネットの下には〈SPOON〉によって組み上げられたエンジンをはじめ、DC5純正ブルースエードを忠実に再現したレカロシートなど、仕上がりのレベルは別次元に。
▪︎City Circuit Orange
モータースポーツの育成やコミュニティづくりに取り組むレーシングドライバー、ハナ・バートンが手がけるカー・ミート&カートイベント『City Circuit Orange』。パートナーサーキットである、お台場の「シティサーキット東京ベイ」の協力のもと、キッズ向けカートスクールや大人も参加できるカートコンペティションが開催。東京オートサロン開幕直前というタイミングに加え、人気フォトグラファーのラリー・チェンによるフォトコンペティションも行われ、カスタムカーが勢揃いした会場には、平日にもかかわらず多くの来場者が詰めかけた。来場者の多くは、アメリカやアジア圏を中心とした海外からのオーディエンスがほとんど。
▪︎NoWhereToGo
カーカルチャーにコミットしたストリートブランド《Peaches(ピーチズ)》が手がけるイベント『NoWhereToGo(ノーウェア・トゥ・ゴー)』。イベントのアイコンになっているのが、巨大なスタジオライトセット。参加車両は巨大なソフトボックスの下を実際に通過し、大勢のオーディエンスから脚光を浴びる仕組み。スポットライトを浴びたオールジャンルのカスタムカーは、それぞれが持つ造形美やディテールが際立ち、一見、アウトローな改造車であっても、その佇まいにみる者に新鮮な驚きを与える。《Peaches》がキュレーションした招待車両に加え、一般公募によるエントリー車両も含め、120台以上のカスタムカーが集結。ジャンルや世代、カルチャーを越えたコミュニティ体験が、Tokyo Car Weekの盛り上がりを見事に締めくくった注目のイベント。
























