Dream
Delivery

B-ON『ストリートスクーター』

  • 2022.7.28
  • TEXT SHOGO JIMBO
  • PHOTOGRAPH MIE NISHIGORI

夢を載せたクルマ
クルマは大きく2つのカテゴリーに分けることができる。それはジャンルやメーカーなんかではなく、「仕事のクルマ」か「プライベートなクルマ」か。なかなかビジネスとプライベートを両立させるのは至難の業かもしれないが、出来ることならどちらも夢をのせたクルマがいい。なぜなら、その方が仕事はやり甲斐に変わり、プライベートはより充実する。これから紹介するドイツのEV系スタートアップが開発したストリートスクーター(現、B-ON)は、そんな夢を “載せた” クルマだ。

EVスタートアップの先駆け
ストリートスクーターは世界最大の物流会社「DHL」がドイツ アーヘンのEV系スタートアップとイチから開発した電動コマーシャルバン。従来であれば、大手自動車メーカーが開発したクルマをベースに、配送用のバンとして架装(=改造)するものだが、世界最大手の物流会社ともなれば、配送に必要な台数は想像を絶するほど。そこで、既存のクルマをベースにカスタムするのではなく、カーメーカーがEVの商用車を発売するだいぶ前に、自ら開発してしまったというのがポイント。これはDHLに限った話ではなく、amazonもアメリカのEV系スタートアップの RIVIAN とタッグを組んで、配送用のマルチバンを、つい先日、ローンチ。こういったクルマ作りの流れを根本から変える出来事が世界では多く見られる。中でもストリートスクーターは、2019年にヤマト運輸にいち早く500台を導入するなど、その動きは早く、都内近郊では、既にクロネコヤマト仕様のストリートスクーターを見かけることができる。そんなストリートスクーターを街中で見かける度に、我々であれば、どんな働くクルマとして使うことができそうか、つい思いを巡らせてしまうのだ。今回はそのアイデアをより忠実に再現すべく、現役カーデザイナーの杉山旅人さんにお願いして、我々のプランを描いてもらったのでご紹介しよう。

illustration by Tabito Sugiyama

ICE CREAM BAR

アイスクリーム屋さんのキッチンカーほど夢のつまった働くクルマはないでしょう。まったくゼロベースの構想段階でさえ、つい胸が熱くなってしまうのは、アイスクリームには小さなお子さんや大人まで、みんなを笑顔にする魅力があるから。そうなるとフレキシブルに動けるように、例えば、昼間は公園、夜は大人が集まるバーみたいに活動できたら理想的。そんな活動にちなんでアイスの“棒”と“バー”を掛け合わせた『ICE CREAM BAR』と命名したい。あとは絶品アイスクリームを開発しなくては!

illustration by Tabito Sugiyama

CAMPING CAR

働くクルマではないかもしれないが、キャンパーカスタムなストリートスクーターはいかがだろうか? 低床の荷台部分を活かして専用のキャンピングユニットをデザイン。ポップアップルーフやオーニングを搭載して、できる限り拡張性をもたせたい。野暮ったくなりがちな既存のキャンパーに対し、洗練度の高いキャンピングカーが実現できそう。現状のストリートスクーターの仕様では、急速充電やバッテリー容量が限られるので、そのあたりの仕様をアップデートして、ロードトリップできるようにしなくては!

illustration by Tabito Sugiyama

MOBILE SHOP

DTドライビングシューズやブランクブラウザーTEEをはじめ、今後も続々と登場するDRIVETHRUオリジナルアイテム。代官山 蔦屋書店でのポップアップイベントでの先行販売のみだったが、もしもストリートスクーターのモバイルショップがあったらなら、神出鬼没な活動に益々、拍車がかかりそう。実現を見越して、先にショップスタッフを募集しておこうか!?

illustration by Tabito Sugiyama

CHARGING STATION

EVに乗る機会が増えるにつれて感じるのは、充電スポットが満車であること。わざわざ充電スポットに到着したはいいが充電器が空くのを待つのはとても辛い。もしも充電器がやって来てくれたら・・・。さらに欲を言えば、できる限り送電線の電気を使わずに再生可能エネルギーを使ったシステムだと理想的。現段階ではこの案が最も実現が難しいかもしれないが、決して絵に描いた餅では終わらせたくない。

B-ON となって再始動
ストリートスクータージャパンを訪ねたのは2021年6月のこと。元、日産自動車出身の代表、白木秀司さんとは、いま世界を駆け巡るEV系スタートアップの存在と、モビリティ新時代の荒波をいかにして駆け抜けていくかといった話題で話が弾み、未来を見据えた取り組みに希望の光がみえた印象だった。しかし、その当時、本国ドイツのストリートスクーター自体の生産がストップしており、行く末が不透明だったのも事実。その後、紆余曲折あった末、株主交代にともない、現在は B-ON という新会社で再始動を遂げている。今後、日本をはじめアジア展開を計画中とのことだが、今回のイラストが架空のままで終わらないよう、ぜひとも実現できるよう期待したい。