COTY
2025-26

2025-26 日本カー・オブ・ザ・イヤー

  • 2025.12.25
  • TEXT & PHOTOGRAPHSHOGO JIMBO

2025年の「いい車」とは何か
通称〈COTY〉こと『日本カー・オブ・ザ・イヤー』の選考委員を集英社「UOMO」のEV連載を長く担当していたことがきっかけで務めることになり、いま日本市場でオススメできる車を知る上で絶好の機会となりました。これまでの我々の取材対象は、DRIVETHRU独自の文脈に沿った車がほとんどでしたが、COTYを通じて、あまり取材することのなかった車種に数多く触れることができました。これはとても重要なことです。「EV」をはじめ「自動運転」など最先端のモビリティの世界に想いを馳せる一方で、2025年現在の日本市場にフィットしたモビリティとは、いったい何なのか?そんな最も身近な視点にフォーカスした機会となりました。その結果、我々が1位に選ばせてもらったのが〈スバル・フォレスター〉でした。見事、我々の視点とも合致し、映えある2025年のCOTYのイヤーカーとして選出されたことは嬉しい限りです。そんな点も含めてあらためて振り返ってみたいと思います。

スバル・フォレスター
日本全国のあらゆるシーンやオールジャンルな皆さんに広くオススメできる車。そう考えると、新型フォレスターがぴったりとハマりました。誰にとっても運転しやすく、実用性の高いパッケージングと高い安全性。今の日本市場において、非常にバランスの取れた一台であり、最も日本車らしい車と感じました。エンジニアリングが先行しがちなスバルの車でありながら、新型フォレスターはデザインコンセプトを追いかけるように開発がスタート。従来のモデルよりも洗練さが際立ち、フォレスター史上、最も変化のあったモデルともいえます。正直なところ、これまでハイブリッドにさほど魅力を感じることはなかったですが、水平対抗エンジンを搭載したフォレスターに触れたことで考えに変化をもたらたしてくれました。北米仕様のオーバーランドグレードの「WILDERNESS」日本投入にも期待です。写真はCOTY最終選考会にて、イヤーカーを受賞した新型フォレスターと開発責任者の只木克郎さん。

フォルクスワーゲン・ID.BUZZ
コンセプトカーの時からその行方を常に期待していた〈ID.BUZZ〉が遂に日本市場に投入。〈VW・タイプ2〉の現代版というだけでは言いきれない魅力がこの車にはあります。効率や合理性が優先されがちなモビリティの世界において「キャラクター」や「親しみやすさ」を正面から打ち出してきた《VW》だからこそできるピープルズカーといえます。実際にUOMO連載時の取材で長期試乗を行いましたが、ピースフルな存在感はあらゆるシーンで受け入れやすく注目の的に。一方で、アメ車のフルサイズに近いスケール感ゆえ、都内での取り回しは難しい場面もしばしば。ただ、このサイズ感こそが“BUZZ”としてのキャラを成立させているようにも思えるので、ポジティブに受け止めたい。将来的にAIや自動運転が一般化したとき、〈ID.BUZZ〉は単なる移動手段ではなく、家族やチームの一員のようなポジションを担う可能性が大いにありえます。

ホンダ・プレリュード
ニュープレリュードは数ある現行車種の中で最も「ドライブすること」にフォーカスした車といえるでしょう。尖ったデザインの3代目プレリュードを所有する我々にとっては、やや控えめな印象の新型ですが、日本の道路環境や速度域の中で、十分に走りを楽しめる要素を、グランドツアラーとして、ホンダがこれまでに培ってきたエンジニアリングによって実現している点が魅力といえます。中でも新開発の『ホンダ S+シフト』というドライブモードは、今後のホンダの車を期待させる技術のひとつです。

COTY最終選考会にてプレゼンテーションするディレクター神保 匠吾。

EVをはじめ多くの最新モデルに触れる中、あらためて実感したのは日本市場においてはハイブリッドが依然としてメインストリームであること。充電環境や使われ方、ライフスタイルをみても、ハイブリッドという選択肢が、今もなお多くの人にフィットしている。一方、テスラのような先進性は、COTYの文脈ではあまり前面に出てこないという点があらためて印象に残ったのも事実でしょう。チャレンジングなテクノロジーやデザインの領域が、そのまま多くの人に推奨できる車かというと、日本市場ではまだ距離があるのかもしれません。そのギャップ自体が、いまの日本の車社会をよく表しているようにも感じます。COTYが必ずしも「いい車」を決める物差しだとは思っていませんが、その年にどんな車が市場投入され、評価されたのか知る上では、とても有意義な機会であることは間違いないでしょう。最終選考会会場でのインスタライブに加え、DT Cars Clubのポッドキャストでも、今回のCOTYについて紹介していますので、あわせて聴いてみてください。また、実際にCOTY投票時に寄せたコメントを以下の通り抜粋しています。その他、多くの選考委員の皆さんのコメントや評価もあわせてチェックしてみるのもオススメです。

第46回 2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤー 選考結果
選考委員別配点表 [詳細]

【総評】DRIVETHRU® ディレクター 神保 匠吾

2025-2026の日本カー・オブ・ザ・イヤーに〈スバル・フォレスター〉を1位に選ばせていただきました。日本全国、あらゆるシーンでおすすめできる一台であり、新型フォレスターはニューモデルらしく磨きがかかっています。誰にとっても運転しやすく、実用性の高いパッケージングと高い安全性が最大の魅力です。エンジニアリング先行になりがちなスバル車の中でも、デザインに重点が置れたプロダクトであり、フォレスターの長い歴史とブランドとしての積み重ねを感じさせます。

〈VW・ID.BUZZ〉を2位とさせていただきました。自動車からモビリティへと移行していく中で、どこか味気なくなりがちな乗り物の世界に彩りをもたらしてくれる素質があります。今後、AI技術の発達に伴い、〈ID.BUZZ〉のようなアイコンは、ファミリーカーとして家族の一員になり得たり、社用車としてチームの一員になり得る存在として、モビリティに求められる役割が広がることを予感させる一台です。

3位には〈ホンダ・プレリュード〉とさせていただきました。あくまで乗用車でありながら単なる移動手段でなく「ドライブすること」にフォーカスした車が新車で手に入ることは非常に素晴らしいことと思えます。ハイエンドなスポーツカーでなくとも、ホンダが培ってきたエンジニアリングによって、日本の道路事情や環境下でも運転の楽しさをあらためて気づかせてくれる、希少な一台だといえます。

 

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