PRELUDE

ホンダ・ニュープレリュード

  • 2025.12.3
  • TEXT & PHOTOGRAPHSHOGO JIMBO

奇をてらわず真っ直ぐに
今の《ホンダ》の車は、かつての奇想天外な印象は惜しくも薄れてきたが、どこか控えめな中にも情熱が宿っているように思える。噛めば噛むほど味が染み出すように、現行のホンダ車は走り込めば込むほどに、作り手の意図が垣間見えてくる。まさに新型〈プレリュード〉はそんな車。“プレリュード=先駆け”という名が示す通り、『ホンダ 0シリーズ』登場が目前に控えた今、その先進性を予感する1台といえるだろう。
ハイブリッドになった新型〈プレリュード〉の最大の魅力は、ロングドライブにフォーカスしたグランドツアラーであるところにある。国産車に限らず、世界中には燃費性能に優れる車や走りのよい車は多く存在するが、ハイエンドな車種を除き、グランドーツアラーと呼べる車は意外と少ない。燃費がよいからといって長距離をドライブしたくなるわけでもないし、居住性が高いからといって、いつまでも乗っていたいということでもない。一方、〈プレリュード〉は、いつもより遠くへ出かけたくなる気分にさせてくれるのは何故なのだろうか?
これは新型に限ったことではなく、我々はテストカーとして3代目の〈プレリュード〉を所有しているが、時代を感じさせる尖ったデザインはさておき、一番の魅力は、何気ないドライブがクルージングしているようで気分がいいところにある。この当時にしては珍しく、既にクルーズコントロールを装備しており、今なお使用している。
それから30年以上も経ち、新たに登場したニュープレリュードの進化は著しい。新開発の『ホンダ S+シフト』というドライブモードを使えば、ドライバーの五感と車が一体となって「GT/スポーツ/コンフォート」の3つのドライブモードをより際立たせてくれる。そもそも〈プレリュード〉には一般的な「ノーマル」が存在せず、グランドツーリングを意味する「GT」モードがデフォルトになっている。「スポーツ」モードでは、研ぎ澄まされた変速フィールとエンジン音が気持ちよく立ち上がり、ドライバーの感覚と車の反応が自然にシンクロする。「コンフォート」モードでは、エコモードのような野暮ったさとは異なり、上品な乗り味が体感できる。どのモードも高速域ではなく、日本の道路事情にマッチした一般的な速度領域で十分に楽しめることが、ホンダのエンジニアリングの高さを裏付けている。何よりこの走りの再現性の高さには〈シビック タイプR〉のシャシーがベースになっているからともいえるだろう。
ただ、デザインについて正直にいうと、初見ではポルシェを思わせるデザインが引っかかった。特にリア周りの処理には既視感がある。我々のようにかつてのホンダ車に惹かれる人にとっては、少し物足りなさが残るかもしれない。しかし、不思議なことに実車が走っている姿を見ているうちに、その印象は次第に変わってくものである。サイズのせいだろうか、大きすぎず小さすぎず、公道であらゆる車と混じると、その独特な存在感に気づかされてきた。それに乗れば乗るほど、〈プレリュード〉との時間は心地よく、記憶に残っていく。復活の名を背負うモデルには、さまざまな期待が入り混じるが、ニュープレリュードは、あえて奇をてらわず、真っすぐにドライブに出かけたくなるモチベーションを上手に形にしている。走り出せば、自然とリズムが合い、日常の景色が特別に感じられてくる。そんな価値ある時間が〈プレリュード〉となら過ごせるのである。

☑︎#6|HONDA Prelude
★★★★★★☆☆☆☆:INNOVATION(革新性)
★★★★★★☆☆☆☆:FEELING(フィーリング)
★★★★☆☆☆☆☆☆:DESIGN(デザイン)
★★★★★☆☆☆☆☆:PERFORMANCE(運動性能)
★★★★★☆☆☆☆☆:SUSTAINABLE(環境性能)
★★★★★☆☆☆☆☆:UTILITY(ユーティリティ)
★★★★☆☆☆☆☆☆:VALUE(コスパ)
★★★★★☆☆☆☆☆:RECOMEND(レコメンド)
〔BRAND〕ホンダ
〔MODEL〕プレリュード
〔POWER〕104kW(エンジン)/135kW(モーター)
〔PRICE〕¥6,179,800 〜
〔TEST DATE〕:2025年9月29日(金)/10月28日(火)
〔LOCATION〕:静岡県伊豆市/埼玉県和光市〜東京都内周辺