Lion Rover

獅子舞ランドローバー

  • 2024.5.8
  • TEXT SHOGO JIMBO
  • PHOTOGRAPH DICKY MA

東洋と西洋の狭間で
香港を拠点にするストリートウェアブランド《GrowthRing & Supply》。デザイナーの Kenji Wong(ケンジ・ウォン)さんより、ランドローバーをカスタムしたユニークな画像が届いた。ショートボディでヤレたブルーのディフェンダー90をベースに、インテリアには日本のヴィンテージ インディゴの刺し子をふんだんに使ってコーディネート。ルーフとスチールホイールのホワイトがアクセントに効いているだけでなく、ブリティッシュ・アーミースタイルを踏襲したというエンジンフードのスペアタイヤには、香港名物とでもいうべき “獅子” が鎮座しているのに驚く。
なぜ獅子を載せたのかその意味を Kenji さんに尋ねてみると、かつて60年代から80年代にかけて、香港の街では、大きな獅子舞をトラックの上にのせたお祭りが存在したという。そのトラックの荷台にはドラムや楽器を演奏しながら、祭りをみんなで楽しむ文化があったそう。当時のトラックは、英国統治下だったため、今はなき Leyland(レイランド)のトラックがほとんどで、今回のランドローバーともゆかりが深い関係性という。
それにしても Kenji さんのクリエイションには、いつも香港の歴史的背景を巧みにプラスする点が面白い。イギリス領時代に香港で青春時代を過ごした Kenji さんだったが、街を行き交うイギリスの軍用車や警察車両に嫌悪感を感じる訳でもなく、ただありふれた光景だったと話す。それよりも、当時、絶大な影響を受けたのは、バブルに沸く日本のドラマやアニメ、それにストリートシーンといったサブカルチャーだった。大人になるにつれて、アジアの真ん中という立地とグローバルに活躍していく中で、西洋と東洋の狭間で培ったバランス感覚が、いつも我々に新たな視点をみせてくれている。