LONDON TAXI

東京の街を走るロンドンタクシー

  • 2016.2.26
  • TEXT SHOGO JIMBO
  • PHOTOGRAPH YUYA SHIMAHARA

ハイブリットカーをはじめ、NYCのイエローキャブにも採用されたミニバンタイプのタクシー車両など、選択幅が広がっているタクシー業界の中で、東京でたった1台だけロンドンタクシーを導入した会社がある。今回は下町人情溢れる墨田区の『互助交通』を訪問してきた。
PHOTOGRAPH: YUYA SHIMAHARA, TEXT : KEI TAKAKUWA

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互助交通は昭和30年創業の老舗タクシー会社。オレンジ色のボディとラグビー型の行灯(あんどん)が目印の「チェッカーキャブグループ」に所属している。最近は、高級感溢れる“黒タク”が業界のトレンドだが、互助交通は頑なにオレンジ色の車両であることを守り続けていた。それは「タクシーはカラフルでなんぼ!」というこだわり。だが、さらに一歩突き進むため、<お客さまの記憶に残るクルマ>としてロンドンタクシー(ブラックキャブ)を導入することにしたという。

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ロンドンタクシーにも数種類あるのだが、こちらの車両は「LTI TX4」というモデル。日本で一般的なタクシーとは異なり、リアスペースはとても広々とした5人乗りの対面シートになっている。運転席とはクリアパネルで仕切られており、ドライバーとコミュニケーションをとる際には、天井に付けられたマイクとスピーカーを使用。このシステムは、必要時以外はオフにすることができ、乗客のプライバシーを確保することができる。

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それゆえ、移動時のちょっとしたミーティングや、デートで利用するときにもピッタリ。(ちなみにTAXI BOYとしては、ドライバーさんとお話したいので常にオン!)
ちなみに、互助交通の専務を務める中澤さんへお話を伺った時は、ロンドンタクシーのリアシートで実施。絶妙な距離感の対面シートは、まさに膝を突き合わせた空間に違いない!

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リアドアにはスロープも付いており、車椅子やベビーカーもそのまま乗れるユニバーサルな仕様。お客さま目線でデザインされたリアスペースも魅力的ではあるが、やはりTAXI BOYの特等席はドライバーさんのお隣。せっかくなのでお邪魔させていただいた。

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ドライバーを務めるのは入社13年目のベテラン、大塚さん。ロンドンタクシー導入と同時に専任ドライバーとして抜擢されたお方。ジェントルマンなハットは、ロンドンタクシー選任ドライバーだけが被ることを許される証。ビシっとした制服の着こなしも相まって、どこか英国紳士の雰囲気が感じられる。それに日本的なレースのシートカバーが、安心感さえをもたらしてくれるのだ。
とはいってもロンドンタクシーに乗り始めた当初は、大変だったそう。日本では見慣れない黒くて大きなボディサイズは、一見、道行くお客さんから「高そう・・・」と勘違いされてしまい、挙がっていた手を降ろされてしまうこともあったとか。(実際には、一般のタクシーと同料金!)

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それでも挫けず、丁寧なコミュニケーションに励むことで、今ではだいぶ認知度が上がってきているという。(TAXI BOYもつい先日、友人から「ロンドンタクシーに乗ったよ〜」と声を掛けられたり!)
ロンドンタクシーは、そもそも、メカニカル的に日本の一般的なタクシーのような自動ドアを装備することができない。それゆえ、大塚さんは毎回ドアサービスをするそうだが、降り際にお客さまから「楽しかった」と声を掛けられることが何よりのやりがいとのこと。素晴らしいエピーソードではないか!

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ロンドンタクシーの導入から半年あまりが経つそうだが、乗ること自体が記憶に残る『想い出タクシー』として観光プランなども企画中とのこと。TAXI BOYとしては、大切な人に気持ちを伝えるプロポーズタクシーとしてもオススメしたい。きっと、大塚さんの丁寧なドライビングが、2人を幸せへと運んでくれることだろう。
 
「変革の渦中にあるタクシー業界を、見える形で伝えていきたい」と専務の中澤さんは話す。ロンドンタクシー導入に続く、今後の互助交通の動向から目が離せない!