エレクトリック・モーターサイクル『zecOO(ゼクー)』の登場を知ってからというもの、つくづく感じるのは、マンガ、AKIRAのような未来がすでに到来しているということ。願うべき、さらなる次世代モビリティの登場に、DRIVE THRUは日々、心躍らされるばかりだ。
まず先陣を切って発表されたzecOOをテストライドさせてもらうべく、テストライダーとしてスピードトラクターのマットさんと共にプレス試乗会へ参加させてもらった。わずかな時間での試乗ではあったが、本記事では彼のインプレッションをもとに日本発の最新エレクトリックバイクの世界を感じていただこう。
PHOTOGRAPH: YUYA SHIMAHARA, TEXT : MATTHEW ROBERTS, SHOGO JIMBO
これまでの常識を忘れよ
もしもzecOOに乗る機会があるなら、まず最初にアドバイスしておこう。これまでに経験したバイクへの常識は、すべて忘れるべきだ。そもそも人間が操縦すること自体が、唯一のアナログな点ともいえるが、まるで映画『スターウォーズ』に登場するスピーダーに股がってる気分なのだ。キーンと高鳴るSFチックなモーター音が未体験ゾーンをふんだんに味あわせてくれる。
エレクトロンな加速
身長190cmのマットさんといえど、大型バイクに匹敵する重量級なボディや長いホイルベースを誇るzecOOを取り回すには、やはり緊張感が走るという。しかし、一度、アクセルをひねると、コンマゼロ秒から瞬く間に始まる144Nmもの最大トルクのおかげで、直線コースが滑走路に思えるほどの加速力を味わえるというのだ。高速域での安定感は確かなものだ。ちなみに最高速度は160km/h。
バーチャル・ステアリングを体感
zecOOの特質すべき点は、数多く存在するが、ステアリングのメカニズムについて触れておこう。zecOOの左右の舵取りは「ハブ センター ステアリング」と呼ばれるバーチャルな操舵方法。操舵には、左右がセパレートになったハンドルレバーを曲がりたい方向に引くとステアできる仕組みだ。リチウムイオンバッテリーといった重量物を搭載しているため、ブレーキング時のノーズダイブ(フロントの沈み込み)を軽減する役目を担っている。
レトロ・エンジニアリングをスタイルとするマットさんにとって、こういったメカニズムは真逆な発想だ。彼曰く、固めなブレーキの反応や操作方法に最初は戸惑いもあったが、乗っているうちにすぐに慣れるという。市販車では、ヤマハGTSやBimota Tesiが採用していているが、前方に突き出たフロントアームはzecOOのキャラクターを特徴づけるエンジニアリングにもなっている。
テストライドを終えたマットさんと、zecOOのコンセプトやデザインを手掛けたznug designの根津孝太さん。開発当初の青写真を忠実に量産化モデルまで落とし込むことができたのは、カスタムバイクの老舗ショップ「オートスタッフ末広」の中村正樹さん、高坂治さんや電子制御のマネージメントをエリック・ウーさんが担当するなど、少数精鋭チームで作り上げたから。限定49台のリミテッドモデルとして発売されたzecOOは、日本のモーターサイクル史に名を刻む1台になることは間違いない。