温故知新な新企画はじめました
【COTY notes】を通じて最新モデルに触れる機会が増えた今、あえてクラシックな車に焦点をあてた新企画『Classics』をスタートしました。記念すべき初回を飾るのは、自動車史に名を刻む名車《マツダ・ロードスター》。世界で最も売れたオープンカーとして錚々たるカーメーカーを本気にさせ、誕生から30年以上経った今も現行モデルが世界中で販売され続けている稀有な存在。もはや日本車を代表する一台といっても過言ではないでしょう。今回は、その中でも最も“濃度”が高いといえる初期型「NA」を、マツダの広報車の中から特別にお借りしました。この個体はロードスターの生みの親であり、チーフエンジニアを務めた平井俊彦氏の愛車だったそうで、まさに開発思想をそのまま体現した一台といえます。
英国ライトウェイトの再解釈
深いグリーンのボディとタンレザーの内装。この組み合わせは、まさしく英国ライトウェイトスポーツカーの雰囲気を漂わせ、〈Lotus〉や〈MG〉を現代的に再解釈し、日本のエンジニアリングで磨き上げたロードスターの本質を端的に示しているでしょう。NAロードスターには、電子制御やハイパフォーマンスと呼べる装備は見当たらない。しかし、軽量なボディ、5速マニュアルトランスミッション、1.6リッターの自然吸気エンジンという極めてシンプルな構造が、ドライバーにダイレクトなフィーリングを伝えてくれることが最大の魅力。コーナーではしっかりとロールし、丁寧に運転すればするほどに親しみが増す。この感覚こそが、ロードスターが“人馬一体”と呼ばれる所以でしょう。ステアリングを切る瞬間の手応えは、車を操る楽しさの原点に基づき、ツーシーター・オープンカーならではの開放感はもちろん、クラッチ操作やエンジンブレーキにも、現代車では味わえないメカを操る感覚が随所に宿っています。
結局のところ、求めているのはスリリングな速さやオーバースペックな性能ではなく、日常の延長線上で楽しめるドライブ以外の何者でもないのかもしれません。それを突き詰めていくと、ロードスターに自然とたどり着く。特に電子制御のない初期型「NA」には、そのエッセンスが凝縮され、オープンカーでありながら、幌を閉じた雨の日にもその佇まいは美しく、晴れの日とは異なるエレガントさを漂わせます。
日本車という枠を超えて、ボーダレスに愛され続けてきたロードスター。世界で最も売れたオープンカーであり続けることは、決して偶然ではないのでしょう。初代「NA」がもつドライビングプレジャーは、自動運転が脚光を浴びるこれからの時代にも、より一層求められる普遍的な価値を証明しています。
※広報車返却前に収録した約10分間のポッドキャストもあわせてご視聴ください。
Special Thanks: HINOKO SHELTER