何となく知っているつもりでいても、実はよく知らないことってけっこうある。これから紹介するユニークな自転車のグラフィックは、そんな思い違いをイタリアのデザイナー、Gianluca Gimini(ジャンルカ・ジミニ)が緻密に具現化したもの。彼が自ら集めた膨大なハンドドローイングと独自の統計結果から生まれたユニークなグラフィックは、自転車史の歴史に名を残すエポックメイキングな名作になるかも!?では、ジャンルカから送られてきたエピソードと共にご覧いただこう。
2009年のある日、私はボローニャのバーで友人と学生時代の話題で盛り上がっていました。あるクラスメイトが、先生に質問責めにあっていました。彼はあまりに焦って今にも泣き出しそうになっていたので、先生は、それに見かね、簡単な質問として彼自身の自転車を描写するよう尋ました。けれども、かわいそうな彼はパニック状態に陥り、自転車の駆動する車輪が、前輪なのか後輪なのかさえも分からなくなってしまいました。友人はこのエピソード聞いて大笑いして、自転車に乗ったことがあるなら、どんな作りをしているかくらい知っているはずだと述べました。そして、すぐに彼は、目の前の紙ナプキンに描写しようとしたところ、無残な結果に終わったのです。これが、このプロジェクトの始まり。その日から私は自転車のドローイングを集めはじめたのです。私はペンと一枚の紙切れを持って、友人や家族をはじめ、道行く見知らぬ人にまで、自転車のドローイングを求めて尋ね歩きはじめたのです。
「ここに男性用の自転車を描いていただけますか?」といった私の奇妙なお願いをすると、ほとんどの人は自転車がどんな仕組みだったか思い出せずにいました。何人かはとても惜しいところまで。また何人かはかなり精巧に。一方、ほとんどの人は自転車とは思えない代物ものを描写することになりました。これは知らないのにも関わらず知ってるつもりになっている脳のトリックを証明するための心理学者が用いるデモンストレーションテストであることと知りました。私は、数百にも及ぶ自転車のハンドドローイングを集めることに成功し、この貴重なクラウドソースを眺めていると、テクニカル的には謝ってはいながらも、ニュータイプとでも言うべき自転車の姿に、驚くべき多様性を見つけたのです。決して1人のデザイナーの生涯では、こんなにも画期的な自転車を100パターンも発明することはできません。しかし、これらのドレーイングコレクションをみていると、敬畏の念を抱いてしまうのです。そこで、2016年、遂に自らもこのプロジェクトに参加する番だと気づきました。
私は、これらのドローイングコレクションの中から特にポテンシャルを秘めたものを発表することにしました。最も興味深く、これまでまったく目にしたことのない自転車をセレクトし、それらが本当に実在するかのようにレンダリングしたのです。すると、2分間に満たない自転車のドローイングが、年齢や仕事に関係なく、誰もが自然に斬新な発明を思いつけることの証明になったのです。統計情報
収集した自転車のドローイング総数:376台
最年少:3 歳
最年長:88 歳
参加者の国籍:11カ国
左を向いた自転車の図:85%
右を向いた自転車の図:15%あとがき
性別によって多様性がさらに異なることが分かりました。約90%の女性は、チェーンを前輪(または前面と背面の両方)に結合しているドローイングだったのです。一方、男性は、一般的に正しくチェーンを配置する傾向があります。ただ、それが正しく描画されているかというと、熱心にフレームを描くあまり、複雑になりすぎていました。参加者に最も多くみられたことは、短時間で、自分の思い描く自転車のドローイングを表現することが困難だったことです。また。最も訳の分からない自転車のドローイングは、お医者さんによく見られました。